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『ユーリアの日記』(C・ネストリンガー、訳=松島富美代、ほるぷ出版)

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『OH DU HÖLLE!』(Christine Nöstlinger、1986)
著者は『あの年の春は早く来た』(岩波書店)で日本でもよく知られる作家で、児童・ヤング向けの作品を数多く発表している。この作品もオーストリアの14歳の少女が綴る日記という形をとったヤング向けの読み物である。

日記は「6月2日の月曜日」から始まる。この日14歳の誕生日を迎えたユーリアのために一族の人々が集まってお祝いの食事を共にし、プレゼントを持ってきてくれたのだが、ユーリアはそれを「ホームドラマごっこ」と評する。つまり、この日だけはママもパパも「パパのくれる養育費じゃ赤ちゃんひとりだって育てられやしない」とか「離婚したとき何もかもママに残したから自分は毛をむしられたオンドリみたいなもんだ」とかいうことは口に出さなかった。二人のおばあちゃんもお互いの息子ないし娘のことでチクチク言い合ったりしなかったし、ママのおじいちゃんはパパのおじいちゃんの「法に忠実な税理士の苦労に関するお説教」を黙って聞いていたし、パパのおじいちゃんもママのおじいちゃんに魚釣りの話をゆっくりさせてあげていた。おまけにエルフリーデおばさんも静かにしていてくれたし、そのネズミ娘にもなんとかたえられた——おばといとこへの悪態が続き、「私が14回目の誕生日をこの人たち抜きで(もちろんパパは特別)過ごしたかったかもしれないなんて、だれ一人思いもよらなかったんだろうね」と辛らつさがエスカレートしていく。このあとみんながくれたくだらないプレゼントの話、その一つのカチャカチャしたアクセサリーは友達のコリーナがどぎつい緑色のズボンと交換してくれるかもしれないという話、コリーナからの連想で、翌日返されるラテン語の宿題の話などが綴られていく。この一日の日記で、ユーリアがママと二人で暮らしていること、パパが大好きなこと、目下のところどぎつい緑色が好きなこと、くせもののコリーナと仲良しだということ、などなどがいっぺんにわかる仕組みになっている。このあと日記は1年の最後(学年の最後)の6月27日金曜日に成績表をもらって、夏のヴァカンスに突入し、7月17日のヴァカンス先における記事で終わっている。

本書の読みどころは次の2点。一つは、自己中心的な「天動説」の子どもだった少女が、自分を取り巻く事柄や人々への理解を深めていく過程が、1か月半という短い期間の日記に凝縮されていきいきと語られていること。もう一つは家族関係や家庭の事情、学校に関するあれこれが詳しく語られていること。特に学校制度や授業・採点の方法など、日本とはかなり違っているところも興味深い。(2015.11.7読了)
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by nishinayuu | 2016-03-02 13:36 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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