『クレモニエール事件』(アンリ・トロワイヤ、訳=小笠原豊樹、草思社)


c0077412_7432759.jpg『L’affire Crémonnière』(Henri Troyat, 1997)
作者は1911年生まれということなので、この作品は86歳の時のものということになる。そんな年齢で、若い娘の心理、恋愛感情などを生き生きと描き出していることにびっくりさせられる。1935年に処女作『仄明かり』を発表して以来、小説、伝記を次々に発表し続け、2007年に亡くなるまでにおよそ100冊の作品を出しているという。まさに現代フランス文学界の巨人ともいえる存在で、人気作家でもあった。

さて本書は、クレモニエール家の長女マリ・エレーヌが、青春の全てをかけて父親の冤罪を晴らす話である。父のフィリップ・クレモニエールが妻殺しの罪で15年の刑を宣告されたのはマリ・エレーヌが15歳の時だった。それから8年、父の無実を信じて闘ってきた彼女は、弁護士会随一の切れ者という評判の弁護士ポルケスの働きのおかげで勝利を勝ち取ることができた。そして父は解放されて家に帰ってきた。けれどもマリ・エレーヌはまだ解放されることはなかった。体の不調を訴え、気力も一向に回復しない父親がすっかり娘に依存していたからだ。娘は娘で、長年の習慣から、自分のために生きることを忘れていた。そのときポルケスが、弁護士ではなく一人の男としてマリ・エレーヌの前に立ち現れて——。

「訳者の私的メモ」(『サトラップの息子』の最後にも全く同じものが載っている!)によると、訳者の頭にトロワイヤの名がインプットされたのは書店で見かけた分厚い『大地ある限り』によってだったそうだが、nishinaの場合は1977年の「私の10冊」に掲げた『エグルティエール家の人々』(1965)の作者としてインプットされている。内容についてはおぼろげな記憶しか残っていないので、いつかまた読んでみようと思っている。(2015.10.19読了)
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by nishinayuu | 2016-02-11 07:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2016-02-12 16:44 x
アンリ・トロワイアはロマノフ王朝の王様の伝記をたくさん書いているので、何冊か読みました。小説は読んだことがないので、読んでみたいですね。これもおもしろそう!
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