『二度死んだ少女』(ウィリアム・クルーガー、訳=野口百合子、講談社文庫)


c0077412_14415885.png『Blood Hollow』(William Kent Krueger, 2004)
クルーガーを読むのはこれで三冊目。前の2冊はなかなかよかったが、この作品はあまりしっくりこなかった。その理由は二つある。一つは登場人物が無駄に(!?)多すぎ、従ってその登場人物にまつわるエピソードも無駄に(!?)多いため、全体のまとまりが悪いこと。もう一つは土俗信仰、キリスト教信仰などの宗教的要素と神秘的なものが多く盛り込まれているため、素直に物語に入り込めないことである。どちらもこの物語の舞台となっている土地を知るための重要な要素であることは理解できるが。
そういえばこの本の帯には「傑作ハードボイルド第3弾」とある。そこを深く考えずにミステリー作品として読んだのが間違いだったのかも知れない。それで今回は内容には立ち入らずに、言葉に関するあれこれを記録しておくことにする。

*ヴァルハラ――Valhalla。妻を亡くしたフレッチャー・ケイン医師と妹のグローリーが所有する別荘の名。もともとは北欧神話の主神オーデンがアース神族の国アースガルドに建てた戦死者の館。古ノルド語ではヴァルホル(Valhöll)。
*ゴス・ファッション――ゴシックファッション。中世ゴシック時代のヨーロッパ風ファッションの意だが、実際はヴィクトリア朝風・エリザベス朝風が混在。黒を基調とすることからヘヴィメタル・ファッションと混同されることも多い。
*「怒れ、光が消えゆくことに」――rage, rage against the dying of the light. 主人公コーク・オコナーの長女ジェニーがつぶやいて、コークが「なんだ、それは?」と訊いた言葉。ディラン・トマスの詩「Do not go gentle into that good night」の冒頭部分。なお、ディラン・トマスDylan Thomas (1914~1953)はウエールズの詩人・作家。
*オジブワ語/アニシナーベ語――北米大陸の五大湖からその西の平原にかけて居住する原住民の言葉。たとえば「五月」はワビグウニギジス、「ありがとう」はミグウェチ。
メンダクス――Mendāx。ラテン語で「嘘つきの、虚偽の/嘘つき」

付け足し:この本の日本語タイトルが納得できない。このタイトルではミステリー作品と勘違いしてもしかたがないのではないか。それはそれとして、原題を直訳すると『血の窪み』。この場所で少女殺害の嫌疑をかけられたソレム・ウィンター・ムーンは魔術師のヘンリー・メルーの勧めで幻視の探求をする。そして「なにも食べず、なにもしないで」時を過ごした六日目に、ソレムはイエス・キリストと対面して語り合い、自分自身を見つけて世の中に戻ってくる。このキリストというのが、ジーンズ、古いフランネルのシャツ、モカシンシューズを履いた旅行者風の男だったという。この男がまたあとで現れるのを期待したのだが、最後まで謎のままだった。残念。(2015.7.22読了)
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by nishinayuu | 2015-11-23 14:42 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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