『チボー家の人々12』((マルタン・デュ・ガール、訳=山内義雄、白水Uブックス)


c0077412_9574787.jpg『Les Thibault12-ÉpilogueⅠ』(Martin du Gard)
副題に「エピローグⅠ」とあるこの巻は、『1914年夏』から4年後の1918年5月から始まる。1614年でチボー家の物語は終わったかに見えたが、そうではなかった。主人公のジャックがいなくなったのになぜ、と思うが、この巻を読んでみるとわかる。この大河小説の真の主人公は実はアントワーヌだったのだ。
1917年の11月末、医師として活動していたシャンパーニュ戦線で毒ガスのイペリットにやられたアントワーヌは今、南フランスはグラッスス近郊のル・ムースキエにあるガス中毒患者療養所で入院治療を受ける身となっている。彼は発熱と呼吸困難、不眠、咳、発声障害などに悩まされながらも、医師として自分の症状を綿密に記録し続けている。目次に従って内容を要約すると――

一、ル・ムースキエ療養所でのアントワーヌ――ジゼールから「おばさん」の訃報を受け取ったアントワーヌは思いきってパリへ行く。「おばさん」の葬儀に参列すること、フィリップ博士の診察を受けること、ユニヴェルシテの家に遺してある研究ノートを持ってくることなどが目的だった。
二、パリにおけるヴェーズ嬢の埋葬
三、アントワーヌ、旧居に帰る――父の死後、思うままに改装した家なのに、「我が家にいるという気持ちにはなれず、おやじの家といった気持ち」になった。1915年3月の消印のある小包からラシェルの首飾りが出てくる。
四、アントワーヌ、ジゼールと家で昼食を共にする――ジゼールがフォンタナン家の人々について語る。
五、リュメル、マクシム亭にアントワーヌを招待――外務省に勤務していてジャックの死の真相を調べてくれ、ジェンニーのスイス行きにも便宜を図ってくれたリュメルであるが、アントワーヌは戦場にある者と銃後にある者の意識の差を思い知った。
六、アントワーヌの夢――戦前の自身のブルジョワ的意識への嫌悪の表れ
七、アントワーヌ、メーゾン・ラフィットを訪ねる―ダニエル、ジャン・ポールとの朝のひととき――チボー家の別荘は傷病兵のための病院に改造され、フォンタナン夫人が采配を振るっている。ジゼールは看護婦として働き、ジェンニーやジャン・ポールと一緒に寝起きしている。その部屋にはパタースンが描いたジャックの肖像画が飾られている。
八、ジェンニーとの最初の語らい――ジャックの忘れ形見を立派に育てなくては、とけなげに語るジェンニー。その一方で彼女はジャン・ポールがジゼールになつくのは「ジゼールさんの中にある奴隷の血」のせいだと言う。
九、ジェンニーとの二度目の語らい――アントワーヌはジェンニーの不自然で皮相な「思想発展」を、ダニエル伯父の遊惰な手本、ないし祖母の示す近視眼的愛国主義以上にジャン・ポールには危険なものだと感じる。
十、フォンタナン夫人をその病院に訪ねる――かつて父の座っていた安楽椅子にどっかりと座るフォンタナン夫人に、複雑な思いのアントワーヌ。ニコルとも再会。ダニエルの変わりようについて、ジェンニー、フォンタナン夫人、ニコルがそれぞれの解釈を披瀝する。
十一、ジャン・ポールとおじアントワーヌ
十二、メーゾン・ラフィットでの夕―ジェンニーとの最後の語らい
(2015.7.11読了)
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by nishinayuu | 2015-10-14 09:58 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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