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『あらしのあと』(ドラ・ド・ヨング、訳=吉野源三郎、岩波書店)


c0077412_140068.jpg『Return to the Level Land』(Dola de Jong, 1947)
これは『嵐の前』の続編で、5年に及ぶナチスの蹂躙が終わってから一年後の物語である。戦争の嵐に襲われた時、「これからつづく不幸な苦しい時期を、りっぱに生きていきましょう」といったお母さんの言葉通り、レヴェル・ランドの人々はそれぞれのやり方で闘い、苦しみを乗り越えてきた。けれども戦争は人の心に底につねに巣くっていて、なにか事が持ち上がると、だれもがつい戦争を引き合いに出してしまうのだった。そんなときお母さんが言う。「なんでも戦争のせいにするのはやめなさい。わたしたちはまた、ちゃんと普通の暮らしに帰っています。わたしたちがなにをしようと、そのときどきわけがあってするのであって、戦争のせじゃありません」と。この言葉を胸に、レヴェル・ランドの子どもたちは少しずつ困難に立ち向かっていく。
さて、『嵐の前』から6年経った今、ミープはロビーという4歳の男の子のお母さんになっていて、レヴェル・ランドに同居している。ヤップは音楽家の道を歩み続けており、ルトは14歳、ピムは12歳、そして『嵐の前』では赤ちゃんだったアンネが7歳、とそれぞれ大きくなっている。けれどもルトの仲良しだったヤンは写真の中にしかいない。家の人たちはヤンの持っていたものは何一つ、売りはらったり、交換したりはしなかったので、いつかはヤンのものがピムのものになるかもしれないが、「ピムはひょっとすると欲しくないというかもしれない」と思うとルトはお腹が締め付けられるような気がするのだった。
この物語のハイライトはヴェルネルとの再会である。ナチスから逃れるために、ミープの決死の手助けでオランダを去ったヴェルネルが、アメリカの兵士としてレヴェル・ランドに現れたのだ。このヴェルネルの帰還はさらに、ヴェルネルとドイツ時代の友人クラウスとの再開につながり、さらにはルトの絵の才能の開花へとつながっていく。そして最後にさらに、輝かしい出来事と感動的な出来事が一度に訪れて、レヴェル・ランドの家族と友人たちは誰も彼もが幸せに包まれる。(2015.5.10読了)
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by nishinayuu | 2015-08-23 14:00 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2015-08-23 21:40 x
肯定的な側面をすっかり忘れているので、もう一度読み直したいですね。子供時代とは違った感想があるかも。
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