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『あらしの前』(ドラ・ド・ヨング、訳=吉野源三郎、岩波書店)


c0077412_10433597.jpg『The Level Land』(Dela de Jong, 1943)
原題のレヴェル・ランドは物語の主人公ファン・オルト一家が住む邸の名である。一家のおとうさんはオランダ中部・ヘルデルラント地方の村のお医者さん。お父さんが4代目で、そのあとを次男のヤンが継いでくれるものとお父さんは思っている。が、ヤンは成績が芳しくないため,校長先生から高校を辞めて補習学校へ転校するよう勧められている。そうなると医者になる道は閉ざされる。医者になるには高校から大学へ、という道しかないからだ。ヤンが医者になるのは無理だとお父さんに打ち明けるべきかどうか悩んでいたとき、救急患者の家におもむき、応急手当をして病院へ搬送するお父さんを手伝ったのがきっかけで、ヤンはやはり医者になろうと決心する。そんなヤンのために、妹のルトは自分の学校を半日休んで,ヤンにもう一度チャンスをください、とヤンの校長先生に頼みに行く。
その頃、一家には新しい家族が加わった。ユダヤ人迫害が始まったドイツから逃げてきたヴェルネルだ。ヴェルネルの両親がドイツを去るおじさんにヴェルネルを託したのだが、そのおじさんが力尽きて入院してしまったため、ちょうどその病院に居合わせたお父さんが一時あずかることにしたのだ。ヴェルネルは一家に温かく迎えられ、歳の近いヤンと同じ部屋で過ごすことになる。しかし、遅れを取り戻すために猛勉強を始めたヤンは集中できず、ヴェルネルもヤンの邪魔になるのでは、と気を遣う。それを見た長男のヤップ(16歳)がヴェルネルを自分の部屋に受け入れる。音楽家を目指すヤップは、自分は一日の大半をピアノの前か教会のオルガンの前で過ごすので、ヴェルネルは部屋をひとりで使える、というのだった。
一家の他のメンバーは、おかあさん(普段はお父さんの助手+一家の主婦として大忙しだが、物語の冒頭では赤ちゃんを産んだばかりで、一日中ベッドにいる)、長女のミープ(18歳。アムステルダムの大学で勉強中。物語の冒頭ではお母さんの代役を務めるためにレヴェル・ランドに帰ってきている)、ピーター・ピム(幼児らしさ全開の言動で家族みんなにかわいがられている。八百屋のユイエンクルイエルと仲良し)、と生まれたばかりの妹アンネ。

村はドイツ国境から離れていたので、ファン・オルト家の人々はドイツ軍がこの村にまで侵攻してくるとは思っていなかった。けれども大きな街に住むミープの怖れが現実となり、一家とヴェルネルに大きな嵐が襲いかかる。(2015.3.21読了)
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by nishinayuu | 2015-08-19 10:45 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)
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Commented by マリーゴールド at 2015-08-19 17:39 x
子供を主人公にして戦争の体験を伝える本は、面白いし多いですね。子供は戦争について責任をとる立場にはいないし、わりと客観的な立場から事態の推移を見ているから、著者も書きやすいのかも。この本は小学校時代に読んだことがありますが、「前」と「後」があって、戦後にユダヤ人の少年が米軍の兵士となって戻ってくるんじゃないかしら。ほかのことはまるっきり覚えていませんが、戦後のうらぶれた情景が印象に残っていました。
Commented by nishinayuu at 2015-08-20 00:07
うちの家族みんなの愛読書でした。今は絶版になっているようです。処分せずにとっておいてよかった!
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