『猫は床下にもぐる』(リリアン・ブラウン、訳=羽田詩津子、早川書房)

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『The Cat Who Went Underground』(Lilian Braun, 1989)
本作はクィラランとシャム猫ココという探偵コンビが活躍するシリーズの9作目。


クリンゲンショーエン家の遺産相続人となったクィラランは新聞記者を引退し、カナダに近いムース郡のピカックス市で悠々自適の暮らしをしている。週に2回「ムース郡なんとか」というへんてこな名称の新聞に『クィル・ペンからのひとこと』というコラムを書くのだけが唯一のオシゴトという気楽な身分だ。
さて今回クィラランは喧噪の町(といってもピカックスの人口はわずか3000なのだが)を離れて一夏を過ごそうと、クリンゲンショーエン家から相続した広大な地所にあるキャビンにやってくる。近くには避暑客たちの共同体〈砂丘クラブ〉があって、若手新聞記者ロジャー・マッギルヴレイの義理の母親で料理の名人のミルドレッドもそこに滞在しているので、楽しい夏が期待できそうだった。
ところがキャビンでクィラランを待ち受けていたのは、暖房機の故障、通風孔の詰まり、水漏れ、断水などなどのやっかいごとだった。なにしろ築75年の建物なのだからそれはしかたがないとして、腹立たしいのは、修理がグリンコ・ネットワークという業者の独占状態で、修理費用が相手のいいなりなことだ。しかも、毎回修理に現れる若い女性の配管工ジョアナ・トラップは、修理の腕は確かだったが、グリンコの領収書に書かれている金額にプラスした金額をクィラランに要求するのだった。
さらなるやっかいごとがクィラランを悩ませる。シャム猫のココとヤムヤムのための部屋を増築することにしたのだが、大工が見つからない。土地のあらゆる職人を傘下に収めているグリンコに、なぜか大工だけはいないのだ。やっと見つかった誠実な大工の青年クレム・コットルは、数日後にぷつりと消息を絶ってしまう。その次にやむを得ず雇った流れ者で怠け者の大工イギーも、数日で姿が見えなくなる。調べてみると、この土地の大工は最近2ヶ月の間に「おそろしいほどの頻度で死んだり、行方不明になったりしている」のだった。ジョアナの父親のジョー・トラップが「事故死」したのを手始めに、流れ者の大工、有能な大工だったパディ・ヤロウ、船大工のフロッグ、と続き、そこにクレム・コットルとイギーが加わったわけで、この土地の「何者かが大工を呪っている」のだとクィラランは推論する。そしてまもなくクィラランの推論の正しさが、床下にもぐるという奇異な行動に執着するココによって証明されることになる。
(2015.4.1読了)
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by nishinayuu | 2015-07-26 10:41 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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