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『猫はブラームスを演奏する』(リリアン・ブラウン著、羽田詩津子訳、早川文庫)

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『The cat Who Played Brahms』(Lilian Braun, 1987)
本書は新聞記者とシャム猫という探偵コンビが活躍するシリーズの5作目。


「老練なジャーナリスト、ジム・クィラランにとって、長いキャリアの中でも、それは一、二を争う身の毛もよだつ瞬間だった」という物騒な文で物語は始まる。何のことはない、新聞社の合理化と記者クラブ改装のニュースに、昔気質のクィラランが大変な反発を覚えたという話だ。折良く母の友人であるファニー・クリンゲンショーエンから、湖畔のログキャビンを無料で貸そうという申し入れがあり、クィラランは新聞社に長期休暇を願い出て、シャム猫のココとヤムヤムを愛車に乗せて北のムースヴィルに向かう。しかし、のんびりと田舎暮らしを楽しみながら、懸案の本の原稿を一気に書き上げよう、というクィラランのもくろみは見事に裏切られる。

この巻では、この先重要な位置を占めることになるムース郡という土地とクィラランとの初めての出会いが語られるとともに、クィラランがある日突然大金持ちになったいきさつなどが明かされる。また、タイトルにある「ブラームス」は「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調 Op.102」で、以前ブラームスしか聞かない女性とつきあっていたクィラランにとって、忘れようにも忘れられない曲なのだという。この曲の入ったカセットテープがログキャビンのステレオにセットされていて、思いがけないときに、あるいはここぞというときに鳴り響く。いつのまにかスイッチの入れ方を覚えたココのしわざだ。クィラランがガールフレンドのローズマリーを招いたときもココがスイッチを入れてこの曲が流れ出したので、クィラランがすかさず「ブラームスはお好き?」ときざな台詞を吐くが、ローズマリーには残念ながら通じなかった(笑)。きざというより教養がついあふれ出してしまうのかもしれない。クィラランはシャロン・マッギルヴレイの店の名前「夜の蝋燭」を見ればすぐにロメオとジュリエットの一節を引用してシャロンを喜ばせる教養人なのだ。因みにその引用部分は第三幕第五場のロメオの台詞。
Night’s candles are burnt out, and jocund day
Stands tiptoe on the misty mountain tops.

(2014.11.26読了)
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by nishinayuu | 2015-07-14 16:01 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2015-07-19 08:45 x
賢い猫ですね。同居するにはロボットよりも猫ですね。
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