「ほっ」と。キャンペーン

『フレッド叔父』(ウッドハウス、訳:大久保康雄、河出書房新社)


c0077412_9444661.png『Uncle Fred Flits』(Wodehouse)
本作はイギリスのユーモア小説の第一人者といわれたウッドハウスによる短編で、『スパッツをはいた若者』(1931)に収められている。
まず語り手としてクランペット氏が登場。場所は有閑階級のたまり場「雄蜂クラブ」。クランペット氏が客をもてなしているところへ、若い男が登場。「容貌はやつれていて、目がおどおどと光っており、その心には何か重い荷物がのっかっているよう」なこの男ポンゴについて、客に聞かれるままにクランペットが語り出す。

ポンゴにはフレッドという叔父がいる。ハンプシア州イケナムにあるイケナム館のイケナム伯爵であるフレッド叔父が明日ロンドンに出てくる、という電報を受け取ったポンゴは、苦悩のどん底に落ち込んでいる。というのもフレッド叔父は一年の大部分を田舎で暮らしているのだが、ときどきポンゴのアパートを急襲するクセがあって、そのたびに「不謹慎」なことをやってのけるのだ。それも、クラブの中だけならピアノをぶちこわす一歩手前ぐらいまで行っても誰も問題にしないが、フレッド叔父はポンゴを外に連れ出して公衆の面前で大それた乱調子の無茶を始めるのだ。
たとえばこの前のときフレッド叔父は、オウムの爪を切りに来た、と言って他人の家に入り込み、留守番の女が用足しに出かけるとその家の主ロディス氏になりすまして訪問者ロビンスン・ウィルバーフォースを迎え入れ、その訪問者にいちゃもんをつけに来たパーカー夫婦をやり込め――という具合にいたずらをエスカレートさせていった。その間にポンゴは、鳥に麻酔を掛ける役のウォーキンショー君ということにされ、次にはロディス二世にされ、それからまた獣医に戻され、耳が聞こえないことにされ――という具合にフレッド叔父の気まぐれ芝居につきあわされた。そうして他人をさんざんこけにしたフレッド叔父は、とどめの一芝居を打ってから現場を立ち去ったのだった。

同じ嘘でも『A.V. レイダー』(ビアボーム)の場合は他人を傷つけない良質の嘘だが、フレッド叔父の嘘は悪ふざけの度が過ぎる。笑えないわけではないけれども、どちらかといえばポンゴと一緒に泣きたくなる。我が家にこんな叔父がいなくてよかった!(2015.3.2読了)
☆この作品は『サマセット・モーム編 世界文学100選』(1961)を再編集した『世界100物語5 意外な結末』(1997)で読みました。
[PR]
by nishinayuu | 2015-06-04 09:45 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/24207517
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 「鶴だと思ったら鷺だった」 『目に見えないコレクション』(... >>