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『蠅の乳搾り』(ラフィク・シャミ、訳:酒寄進一、西村書店)


c0077412_1052771.jpg『Der Fliegenmelker』(Rafik Schami, 1993)
作者は1946年にシリアのダマスカスで生まれた。1971年にドイツに移り、化学の博士号をとって研究所で働いていたが、82年からは作家活動に専念している。作品の一つ『空飛ぶ木』は本書と同じ酒寄進一の訳で同じ西村書店から出ている。2冊ともぱっと目を引く美しい装丁の本である。

舞台はダマスカスの旧市街で、語り手の目にする出来事と、70歳のサリムじいさんの昔語りが13のエピソードにまとめられている。街にはパン屋、ケバブ屋、八百屋、豆屋、床屋、電器屋、酒場などがひしめき、花売りや石工、毛皮職人などが動き回り、子どもたちも親を助けるために、あるいは小遣い稼ぎのために店の手伝いをしたり、物を売り歩いたりしている。街には外国人の観光客もやってくる。イスラム教徒とキリスト教徒が混在するこの街にはモスクもあれば教会もある。様々なことばを使う様々な人々が、ときにはいがみ合い、ときには意気投合しつつ暮らしているのだ。そんな街で、語り手の少年はサリムじいさんの昔語りを聞き、父親のパン屋を手伝い、飴売りの商売で稼ぎ、学校に通いながら友達とも存分に遊び、ダマスカスの一番美しい季節に美貌の人妻に恋をして大人になっていく。
笑える話もあれば笑えない話もあり、政治や宗教をおちょくる話もあれば、深く考えさせられる話もあって、そのどれもが味わい深い。おまけとしてアラビア語もかじれる。フルは空豆、ブクラは明日の意味だそうだ。(2015.1.30読了)
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by nishinayuu | 2015-04-20 10:06 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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