『リンバロストの乙女』(ジーン・ポーター、訳:村岡花子、河出書房新社)


c0077412_10544522.jpg『A girl of the Limberlost』(Gene Porter, 1909)
リンバロストというのはインディアナ州にある広大な湿原。本作品はそのリンバロストを舞台に、一人の少女が自分の道を切り開いていく過程を描いたもの。登場するのは本質的に善人ばかりで、はじめはひどい人物に見えても、それにはそれなりの理由があることが説明されており、きっかけさえあれば目覚めて改心できる人々ばかりである。主題は主人公の成長であるが、主人公を取り巻く少年少女や大人たちにも作者の温かい目が注がれており、この作品が家庭小説として広く読まれたというのも納得できる。
主要登場人物は以下の通り。
●エルノラ――実の母親から育児放棄・虐待されて育ったにもかかわらず、優しく賢くしかも美しい、完璧ともいえる少女。蛾の標本作りで町の高校に通う費用を作り、大学も目指す。
●ケート・コムストック――エルノラの母。夫の死とエルノラの誕生が同時に起こって以来、長い間心がねじれたままだったが、夫の死の真実を知って娘を愛し始める。
●ウェスレイ・シントントマギー・シントン――コムストック家の母娘を見守る隣人。
●ビリー――父親を亡くしたあとシントン夫妻に引き取られた少年。
●ピート・コーソン――エルノラの幼なじみ。悪い一味に入っているが、エルノラには優しい。
●鳥のおばさん――リンバロストの鳥や昆虫の研究者。ポーターがモデル。
●フィリップ・アモン――立派な家柄、立派な学歴、素晴らしい人柄の完璧ともいえる青年。
●エディス――フィリップの婚約者。エルノラに対抗心を燃やす。
●そばかす――同じ作者の『そばかす』の主人公。(何の説明もなくいきなり登場するので戸惑う。この作品には他にもそうした説明不足の言及があちこちに見られる。『そばかす』を先に読むべきでした。)

この作品で特筆すべきは、舞台となっているリンバロストの大自然――その美しさと恐ろしさ、そこに生きる動植物、特に主人公が愛して止まない蛾たちの生態が、驚くほど懇切丁寧に生き生きと描かれていることである。因みに作者のポーターはナチュラリストで、リンバロストの鳥類や昆虫の研究者だったという。だから作品には膨大な数の植物や昆虫の名が出てくるのだが、インターネットのない時代にそれらを一つ一つ調べあげるのはどんなに大変な作業だっただろう。村岡花子の偉大さをあらためて思い知った。(2015.1.20読了)
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by nishinayuu | 2015-04-12 11:00 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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