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『ただひたすらのアナーキー』(ウディ・アレン著、井上一馬訳、河出書房新社)


c0077412_151027100.jpg『Mere Anarchy』(Woody Allen, 2007)
本書はウディ・アレンという人物とその作品に通じた人向けの、つまり通じていない人(nishinaもそのひとり)にはちょっと手に余るマニアックな小説集である。また訳者によると、「収録作品18のうち10編は究極のインテリ雑誌である『ニューヨーカー』に掲載された」ものだそうで、「物理学の最新のひも理論や宇宙膨張説を取り入れたウイットやユーモアを十全に披露している」のだそうだ。アメリカ文化圏のインテリが持つ知識や一般教養を持ちあわせていない輩には歯が立たない、ということだ。だから、訳者あとがきを先に読んでいたらそもそも読み始めなかったかも知れない。ただし、十分な理解は届かなくても、それなりに楽しむことができる作品がないわけではない。たとえば
『売文家業』(フォークナーもフィッツジェラルドもガルシアもやったノベライゼーション)
『ハレルヤ、売れた、売れた!』(現ナマを求めて祈りの言葉を売り出した結果は…)
『不合格』(息子が一流幼稚園に入れなかった家族の行き着いた先は…)
『歌え、ザッハートルテ』(世紀末のウィーンの音楽家、画家、文人が勢揃い)
『天気の悪い日に永遠が見える』(『地獄変』に書かれてしかるべき建築業者との出会い)
『ツァラトゥストラかく食えり』(ニーチェのダイエットブック!?)

最後の収録作品『ピンチャック法』の中に「霊媒師のB.J.シグムントは、海で事故に遭ったときに名前の母音を全部なくしちまったオーストリア人」とあって、その名前がSygmndと綴られている。作者のフィクションくさいが、口をあまり開けなくても発音できるそんな名前が、北の方の国にはありそうな気もする。軽くウエブ検索してみた限りでは見つからないが。
ところで、この作品をきちんと理解できたかどうかは心許ないが、タイトルを「ただひたすらのアナーキー」と、人を惹きつける七五調にした訳者(あるいは編集者?)がすばらしいセンスの持ち主であることは確かだ。(2014.12.17読了)
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by nishinayuu | 2015-03-11 15:10 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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