『画家の妻たち』(澤地久枝著、文藝春秋社)
2015年 03月 03日
取り上げられているのは19組。画家によって美しい姿で画布に残された妻たち(モネの妻カミーユ、ピカソのオルガ、シャガールのベラ、ダリのガラ)もいれば、幸薄き人生を思わせる姿で残された妻たち(ロセッティのエリザベス、モディリアニのジャンヌ)もいる。画家を陰で支えた妻たち(セザンヌのオルタンス、ルドンのカミーユ、)もいれば、画家に支えられて生きた妻(ボナールのマルト)もいる。窮乏や芸術家の奔放さにずたずたにされた妻たち(レンブラントのサスキア、ゴーギャンのメット)がいる一方で、聡明な妻たち(マネのシュザンヌ、マチスのアメリー)、強靱な精神力を持った妻たち(岸田劉生のシゲル、リベラのフリーダ)、平穏に生きた妻たち(ミレーのカトリーヌ、もいる。(最後に取り上げられている現代画家のワイエスの場合だけ、表題に掲げられているヘルガはモデルであって妻ではないが、妻も強烈な個性の持ち主として登場している。)
絵の背後にある様々な人生を語るに当たって著者は、精力的な絵画探訪の旅から得たものに「先学たちのまとめた資料」を重ねていったという。中にはもちろん、著者が独自に発見した事実も含まれている。著者の精力的な旅は基本的には一人で、ときどきは向田邦子とともにしたものだという。向田邦子は、次のような魔法の言葉で著者を絵画の旅に駆り立てて、本書の誕生に大いに貢献したらしい。
「あなたがどんな表情をするか、見ている楽しみがあるのよ。どんな感想を言うか。興味があるの。」
著者と向田邦子との親交ぶりは向田邦子の『眠る盃』(こちら→)からもうかがい知ることができる。(2014.12.10読了)
ルネ・マグリットRené Magritt 20世紀を代表するシューリアリスムの巨匠・ルネ・マグリットの大規模な回顧展が、東京の国立新美術館で開催されました。ブリュッセルのマグリット美術館の全面的な協力を経て世界各地から初期から晩年までマグリット芸術の変遷をたどる130点の作品が集結し、マグリット芸術の変遷と全貌をたどることができました。... more