『隼のゆくえ』(ヴィクター・カニング著、中村妙子訳、新潮社)


c0077412_10584751.jpg『The Painted Tent』(Victor Canning, 1974)
三部作『スマイラー少年の旅』のⅢ。この巻で重要な役割を果たす動物は人の手で育てられて外の世界を知らない若い雌の隼・フリアである。
第Ⅱ部で日々の暮らしの喜びを味わい、将来への準備も着々と進めていたスマイラーだが、新たな密告者の出現でまたまた逃亡者となる。今回スマイラーは正体不明だがよく気のつく男ジミー・ジャゴーの車に便乗してスコットランドから南下し、イングランド西南部に向かう。途中、ジミーの計らいでブリストルに立ち寄って姉の夫に無事を伝えたあと、ジミーの母親の「ダッチェス(侯爵夫人)」の許に身を寄せる。ダッチェスは水晶玉で人々の将来を透視する占い師としてサーカスで働いていたが、今は引退して農場を経営する傍ら、休業中のサーカスの動物を預かったり、病気の動物の世話をしたりしている。ジミーとダッチェスはスマイラーには聞き取れない言葉(あとでロマニ語だとわかる。彼らの一族はジプシーだった)で話し合って、スマイラーを受け入れる。
翌朝、ダッチェスは裏庭をすっかり占領している大きなテントにスマイラーを案内する。中世の戦場の天幕のような形で、丸屋根のてっぺんに立つ竿の先には赤と白のペナントがはためき、テントを囲む頒布は赤黄青の縞模様だった。ここでスマイラーの過去と未来を透視したダッチェスが見たのは――小さなボートに乗った女の子(ローラ)、汽船の甲板でハーモニカを吹いている男(スマイラーの父親)、大きな部屋と紳士淑女の肖像画(古城の城)背の高い白髪の顎髭の男(殿さま)、彼らに囲まれてしあわせそうなサムエル・マイルズ(スマイラー)、そして黒雲の下を必死で駆けている血だらけの男だった。心配するスマイラーにダッチェスは言う。スマイラーのしあわせな未来と、ある男の不幸な未来がほんの一瞬、水晶玉の中で絡み合っただけなのだ、と。(2014.1019読了)
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by nishinayuu | 2015-01-06 10:59 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2015-01-06 19:28 x
動物たちの未来も気になりますね。
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