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『The Amateur Marriage』(Anne Tyler, Ballantine Books, 2004))

c0077412_10252251.jpgタイトルは素直に訳せば『アマチュアの結婚』。『技量不足の結婚』といったところか。作者が「最上の作品で、とても誇りに思っている」と言うだけあって、読みでのある傑作である。
物語は1941年12月のSt. Cassian Streetに始まり、それから60年後まで、ある家庭に起こった出来事が年代記風に綴られていく。

St. Cassian Streetはメリーランド州東バルチモアにあり、住民の大多数はポーランド系の人々である。1941年の12月、街は戦意高揚のためのパレードに沸き立っていた。Szapp兄弟が掲げたプラカードにはWatch out, Japs! Here come the Szappsという文字が躍っていた(みごとに脚韻を踏んでいますねえ)。若者達は先を争って軍に志願していく。彼らとペアになった娘達は、戦地に赴く若者を見送る娘、という役割に陶酔する。そんな雰囲気に押されてペアになったのがマイケルとポーリンだった。マイケルは黒髪、短髪、やせ形、ひげが濃い若者で、食糧雑貨店を営むミセス・アントンの一人息子。ポーリンは深い金色の髪、目は青紫、声は低いハスキーヴォイスで、すらりとしていて赤いコートがよく似合う娘だった。このとき二人は20歳。バスが志願兵達を迎えに来て、マイケルとポーリンはドラマチックな別れを演じる。そして、若者達の戦死の知らせが相次ぐ。Szapp兄弟も立て続けに死んだ。けれどもマイケルは死なずに帰ってくる。ただし脚に大きな障害を負って。戦争が終わり、恋の季節がやって来て、結婚するものも増える。だからミセス・アントンが店の客達にマイケルとポーリンが結婚すると言っても誰も驚かなかった。二人はパーフェクトなカップルだと人々は思ったのだった。
しかし二人の結婚は嵐の連続だった。マイケルは非社交的で、店の仕事が最優先でどこにも出かけようとしない。興奮したりはしゃいだりすることは全くなく、口べたで寡黙。ポーリンはマイケルとは逆に、楽しく元気に暮らしたいのにそれがうまくいかないと怒り狂う、という感情の起伏が激しい性格。これほど相反する性格の上、二人の結婚観も全く違っていた。マイケルは「結婚は別々の人間が並んで歩く道」と考えているのに対し、ポーリンは「結婚というのは魂が混じり合うことで、なにもかも一致すべきだ」と考えている。それでポーリンはことごとくマイケルに不満をぶつけ、マイケルはなぜ彼女がそんなに怒り狂うのか理解できない。三人の子どもに恵まれたが、幼い頃から反抗的だった長女のリンディーが17歳で家を出て行ってしまう。このリンディーの失踪はポーリンを生涯苦しめることになるのだが、ポーリンの苦難はそれだけでは終わらなかった。

ポーリンは一緒に暮らすには大変な人間だ、と作者自身が言っている。ということはつまり、彼らの結婚を「アマチュアの結婚」にした責任の大半はポーリンにあるということだろうか。それで作者はポーリンのほうにより過酷な運命を与えたのだろうか。それでも物語の最後の場面は、作者の愛情がポーリンとマイケルの二人に同じように注がれていることを感じさせる。(2014.8.23読了)
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by nishinayuu | 2014-12-01 10:27 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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