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『夢のボート』(リチャード・プレストン著、富永和子訳、小学館)


c0077412_1659770.jpg『The Boat of Dreams』(Richard Preston)
前書きに「病気で余命いくばくもない友人と悲しみにくれている家族のために書いた」とある。闘病ものは苦手なので読もうか読むまいか迷ったが、読み始めてみたら闘病ものではないことがわかってほっとした。けれども、トレーラーハウスで暮らす家族の話なので、幸せいっぱいの話というわけではない。しかも途中でなんと幽霊が登場してきて、何となくおかしな展開になってくる。この幽霊というのが実は衝突事故で聖霊になってしまったサンタクロースなのだという。このサンタクロース、不機嫌で体臭がきつくてかさばる、というところは実にリアリティーがあるのだが、同じく聖霊になったトナカイにそりを引かせて空に舞い上がる、という具合に一気にファンタジーの世界に突入する。しかも子供だましのような。
しかし、である。読み進めるうちにわかってくる。これは語り手の「ぼく」の成長物語なのだ。「ぼく」は13歳なので、家族の状況がよくわかる。頼もしくて優しいパパがベトナムの戦場で死んでしまったために、懸命に働いてとても疲れているママのこと、幼くてあどけなくて、だからときどきものすごく手がかかる妹のこと、いつまで住めるかわからないトレーラーハウスこと、もうすぐやってくるクリスマスのこと――13歳の「ぼく」には考えるべき事、対処すべき事がいろいろあって、泣きたくても泣いてなんかいられないのだ。妹のめんどうを見、ママを支え、やっかいなサンタクロースと駆け引きをしながら「ぼく」はなんとかがんばっている。でも、サンタクロースに欲しいものの「夢」を思い浮かべて見ろといわれたとき、サンタクロースなど信じていないのに「ぼく」は答えてしまう。「パパが戻ってくることだ」と。(2014.8.9読了)
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by nishinayuu | 2014-11-23 16:59 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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