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『マルコーニ大通りにおけるイスラム式離婚協奏曲』(A・ラクース著、栗原俊秀訳、未知谷)

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『Divorzio all’islamica a viale Marconi』(Amara Lakhous, 2010)
物語はローマに実在するマルコーニ通りで繰り広げられるスパイ大作戦劇である。様々な国からやって来たイスラムたちが暮らすローマの中のイスラム世界であるマルコーニ大通りに、ある任務を帯びてシシリア島出身の一人の男が入り込む。チュニジアからの不法移民に化けたこの男は、この地区を拠点とするテロ集団の組織を突き止め、彼らが実行しようとしている作戦を阻止する、という使命を帯びていた。一方ここにエジプトからやってきた一人の女がいる。移民としてここのイタリア料理店でピッツァ職人をしている同郷の男と結婚したのだ。それぞれ育ちも生活習慣も考え方も違うこの二人が、コール・センターの「リトル・カイロ」で出会う。男は任務遂行のために与えられた偽の家族ととりとめのない話をしていた。女はカイロにいる家族から妹が結婚するという話を聞いていた。ふと隣のボックスに目をやった男は、ヴェールをかぶったその女をすごいべっぴんだと思う。それから男は、涙が止まらない女にそっとハンカチを差し出した。それだけのことだった。が、そのあとも何回か偶然の出会いがあり、しだいに相手への関心が高まっていき、ついに二人は決定的な運命のときへと突き進むことになる。主要登場人物は以下の通り。
クリスティアン・マッツァーリ(またの名はイーサー):主人公。イタリア人ながら完璧なチュニジア語を話す。優秀でハンサム、しかも人情味もある人物として描かれている。
ソフィア(本名はサフィーア):男性絶対の思想に疑問を持ちながらも、穏やかな方法で自分の世界を広げていこうとしている理性的な女性。ローマでヘアー・サロンを開くことを目指している。ソフィアの名はソフィア・ローレンから取ったもの。
タッサロッティ大尉もしくはジゥーダ:テロ対策のための組織「シスミ」に所属し、「リトル・カイロ作戦」のためにイーサーをリクルートした人物。
アクラム(またの名はジョン・ベルーシ):コール・センター「リトル・カイロ」の所有者で、エジプト人。ジゥーダによるとローマへのテロを計画しているテロ集団二つのうちの一つがこの店を拠点としている。
サイード(またの名はフェリーチェ):ソフィアの夫。大学で建築を学んだがイタリアに移民してピッツァ職人をしている。妻の思いが理解できず、3度目の離婚宣言をしてしまう。3度離婚宣言をした場合は、妻をいったん他の男と結婚させたあとで再婚する形を取らねばならない、という教えを忠実に守ろうとする律儀なイスラム教徒。
サーベル(エジプト人)、イブラヒマ(セネガル人)ムハンマド(モロッコ人)、オマル(ベンガル人):イーサーがチュニジア人になりすまして入居したアパートの住人たち。全員ムスリム。

☆ところで、はじめジゥーダの名で登場した人物が、「イーサー16」の途中からジューダに変わっている!未知谷は個性的ないい本を出す出版社だと思ってきたのに。校正、しっかりお願いします。それと、この作品はローマのアラブ社会を知るのに大いに役に立ちますし、テンポのよいストーリー展開でおもしろく読めますが、結末がイマイチです。スパイ活劇としてはいいとして、ソフィアはどこにおいて来ちゃったのでしょう。(出版社に言っても仕方がないことですが。)(2014.7.7読了)
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by nishinayuu | 2014-10-18 18:49 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2014-10-19 17:11 x
イタリアとイスラムの国々は隣国だし、歴史的にも関係が深いから、日本人の感覚とは違うでしょうね。
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