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『마음속의 도깨비』(장영희、[살아온 기적 살아갈 기적, 2010)


c0077412_14174050.jpg『心の中のトケビ』(張英姫)
本作品は『生きてきた奇跡、生きていく奇跡』に収められた5ページほどの随想で、韓国語講座のテキストとして読んだ。著者・張英姫は英文学者、翻訳家、随筆家として活動するとともに、韓国障害者財団の監事も務めた。小児麻痺による障害、癌との闘病という過酷な状況のなかで、希望を持って生きることを実践したが、2009年に57歳で世を去った。

トケビとは「化け物、妖怪、へんげ、あやかし」などを意味する韓国語。人間を害する恐ろしいトケビもいれば、いたずら好きの愛すべきトケビもいる。本作品では「人の心の中にあって秩序や平穏、善良さに反抗してみたくなる気持ち」のことをトケビといっている。日本語訳としては「天邪鬼」が近いようだ。
そのトケビが頭を擡げると下記のような具合になる。(〇がある人が送ってきたEメールの最後に添えられていた「心が清々しくなる文」で、●がそれに反発する心の中のトケビのつぶやき。)
〇今日私が無為に過ごした時間は、昨日死んだ人が切望した明日である。
●そう、私は今日も無為に過ごした。いや、今日だけじゃない。昨日も一昨日もずっと無為に過ごした。だからどうしろというのだ。昨日死んだ人の代わりに私が生きていて申し訳ないと思えということか。
〇人のためになにかをするということは傘を持ってあげることではなく、一緒に雨に濡れることだ。
●ほんとにわけがわからない。傘を持ってあげれば二人とも少しは雨が避けられるだろうに、りっぱな傘があるのになぜ一緒に雨に濡れなければならないのか。
〇人生には物事がうまくいくときがある。けれどもそれは長くは続かない。人生には物事がうまくいかないときがある。それもまた長くは続かない。
●理論的には、ということだ。他の人間は物事がいつもうまくいき、それが長く続く。私の人生はうまくいかない。それも長く続く。

ただし、著者のトケビは決して外に飛び出すことはないし、いつまでも息巻いてはいない。トケビはいつの間にか静まって、著者はまた真摯で前向きな気持ちを取り戻すのだ。
(2014.5.9読了)
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by nishinayuu | 2014-09-04 14:18 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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