『閘門の足跡』(ロナルド・A・ノックス著、門野集訳、新樹社)


c0077412_10121642.png『The Footsteps at the Lock』(Ronald.A.Knox,1928)
物語はテムズ川上流、オクスフォードに近い支流を舞台に繰り広げられる。25歳になったら祖父の遺産を相続することになっているデレック・バーテルは、相続金をかたに借金を重ね、借金の額の方が相続金を超えるほどになっていた。貸し主たちは、不摂生のために身体がぼろぼろになっているデレックが25歳まで生きられるかどうか危ぶんだが、デレックはそんな貸し主たちを安心させるために生命保険に入ることにした。どこも引き受けない彼の生命保険をあっさり引き受けたのは生命保険界の巨人・インディスクライバブル社だった。ただしデレックに「専門の医師の指示に従うこと」という条件を付けて。こうしてデレックは保険会社に紹介された医師の指示に従って、友人と二人で川下りの旅をすることになる。
デレックが川下りの連れとして選んだのはいとこのナイジェル・バーテルだった。二人はあいついでオクスフォード大学に受け入れられたが、一方は自堕落なまま卒業し、もう一方は反抗と過激さで学内をかき回していた。祖父の存命中も死後もほとんど顔を合わせることのなかった二人だが、互いに相手を軽蔑し、嫌っていた。そんな二人がそれぞれの思惑を胸にボートに乗る。

手がかりと伏線、トリックがふんだんにあって(というより、ありすぎて)、簡単には読者の推理を許さないミステリーであるが、全体としては強引さのない納得できる筋立てで、素直に楽しめる。ただし、二人がボートで乗り出した川の流れが、巻頭にある地図を見ていてもなかなか飲み込めなくて――というのも図の下方が上流、上方が下流になっているので――慣れるまでに随分時間がかかって大変だった。「フェアプレイの文学」と題する解説(真田啓介)も読み応えがあった。
上記の二人の他の主な登場人物は以下の通り。
マイルズ・ブリードン:保険会社インディスクライバブルの代理人・私立探偵
アンジェラ・ブリードン:マイルズの妻
リーランド:スコットランド・ヤードの警部
バージェス:シップコート閘門の門番
エラズマス・クアーク:アメリカ人の素人探偵
(2014.4.20読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-07-22 10:13 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/22388873
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 公任の大納言、白川の家に和歌を... 『リトルターン』(ブルック・ニ... >>