『行く先は晴れやかに あるいは、うろ覚えの詩が世界を救う』


c0077412_13471883.jpg(ヴェンデラ・ヴィーダ著、秦隆司訳、河出書房新社)
『And Now You Can Go』(Vendela Vida)
物語の主人公はコロンビア大学大学院で美術史を勉強している女子学生のエリス。21歳で、9月にニューヨークに移ってきたばかりなので知り合いがいないため、午後はアパートの通りの向こうにあるリバーサイド・パークで過ごしていた。ところが12月2日の午後2時15分、ここの遊歩道を歩いているとき、後ろから声をかけられる。振り返ると男が立っていて、エリスに銃を突きつけ、一人で死ぬのはいやだ、誰かと一緒に死にたいんだ、と言う。エリスは死の恐怖におびえながらも男に人生は生きる価値があることを必死に伝えようとする。子供の頃母親から暗唱させられて頭に残っているうろ覚えの詩を手当たり次第に男に聞かせながら。すると男は「あのさ、もう逃げてもいいよ。どこにでも行って好きなようにしてくれ」と言って立ち去る。
この事件がその後のエリスの物語の始まりとなり、同時にこの事件に至るまでのエリスの物語も明かされていく。飛び級するほど勉強ができて、きれいだけれどもお腹のあたりが太めなのを気にしていて、いろいろなタイプ男性に惹かれ、妹のフレディと親友のサラにはなんでも話せるけれど、両親にはちょっと……そんなエリスの様々な感情と日々の出来事が描かれていて飽きさせない。例えばこんな場面がある。

銃を持ったあの男を連れて行こうとした本屋に入る。あの男がいるに違いない、と半分本気で思う。本棚が並ぶ通路をくまなく何度も往復して、男の姿がないことを確かめる。(中略)19世紀の英文学のクラスでは、課題図書として、ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』と、サッカレーの『虚栄の市』が出されていた。本棚から本をとる。次に自己啓発書のコーナーで、『愛しすぎる女たち』を何冊か取り出す。もとの本棚に戻り、19世紀の小説の間に『愛しすぎる女たち』を挟む。思わずひとりで笑ってしまう。
(2014.4.8読了)
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by nishinayuu | 2014-07-10 13:47 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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