『少女』(アンヌ・ヴィアゼムスキー著、國分俊宏訳、白水社)
2014年 07月 02日
『Jeune Fille』(Anne Wiazemsky)
本書は17歳のひとりの少女(原題では若い娘)の成長物語である。少女は1965年の春に映画監督のロベール・ブレッソンに出会う。そしてその年のその夏、少女はロベール・ブレッソンという強烈な個性による束縛と献身の綯い交ぜになった愛と薫陶によって、ひとりの少女から女優へと変身していく。
ロベール・ブレッソンをはじめとして著名な人物が実名で登場する。主人公アンヌは著者アンヌ・ヴィアゼムスキーその人であり、その祖父はノーベル賞作家のフランソワ・モーリヤック、伯父はやはり作家のクロード・モーヤック、撮影現場に現れてうろちょろする若手の監督ジャン=リュック・ゴダールは、後に著者が結婚した人物という具合。そしてこのときに撮影が行われ、女優アンヌ・ヴィアゼムスキーのデビュー作となった映画は『バルタザールどこへ行く』(1966年公開)である。
著者は映画俳優、舞台俳優として活躍したあと作家に転身し、「高校生が選ぶゴンクール賞」、「アカデミー・フランセーズ賞」など数々の賞を受賞した、フランスではよく知られた作家だという。
冒頭に述べたようにこれは少女の成長の物語でもあるが、映画の(特にブレッソンの)ファンに、また文学の(特にモーリヤックの)ファンに興味深いエピソードの数々を提供するユニークな作品でもある。(2014.4.4読了)