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『アリランの歌』(金山&ニム・ウェイルズ著、安藤次郎-訳、みすず書房)


c0077412_11238100.jpg『Song of Ariran---The Life Story of a Korean Rebel』(Kim San & Nym Wales, 1941)
金山(1905~1938?)は朝鮮人革命家。朝鮮の国土と人民を日本帝国主義のくびきから解放することを目指して、中国との国際的共同闘争に身を投じた。「金山」はいくつか持っていた偽名の一つで、ウェイルズにこっそり打ち明けたところによると本名はチャン・チ・ラック(Chiang Chi-rak、張志楽)だという。1937年の夏に中国の延安でウェイルズに出会い、彼女に請われるままに半生を語ったあと、華北遊撃戦の前線をくぐって満州に向かったところで消息は途絶える。
ニム・ウェイルズ(1907~1997)はアメリカ人。中国でジャーナリストになることを目指して1931年に上海に渡り、その地でエドガー・スノーと結婚(後に離婚している)。金山の中に「閉ざされた国」朝鮮の偉大な革命家を発見して、彼の辿ってきた道とその思想を一冊の本にまとめることを提案する。金山が精密で膨大な語りによって資料を提供し、ウェイルズがそれを忠実に記録する、という共同作業の結実したものが本書である。

本書はなによりもまず朝鮮の革命運動についての――朝鮮及び満州におけるその発端から、1925年以後、中国革命の闘争と足並みをそろえるまでの――物語であり、また、この時期に朝鮮人指導部の先頭に立っていた金山の物語でもある。金山は1919年から1924年までは知識と手段と方法を手探りする学生で、民族主義から無政府主義へと移り動いたが、やがてマルクス主義に足場を見いだして中国革命に身を投じ、広州コンミューン、海陸豊を経験する。地下生活、獄中生活という過酷な生活によって健康を害し、多くの仲間の死や裏切りといった過酷な精神的苦痛も受ける。常人であれば心身ともに再起不能となるはずの体験をしながら、金山は晩年(といっても30代!)には恋もするし、結婚もする。そうした人間らしい情を失うことなく、さらに新たな闘争へと邁進していく金山という人物にただただ圧倒される。(2014.3.17読了)
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by nishinayuu | 2014-06-08 11:01 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2014-06-12 09:51 x
何十年も前に読んで感動した本です。でも今は少し考えが変わってきています。事実を検証する必要があると思っています。彼一人の経験ではなく伝聞情報も含めて語っていると思うからです。
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