『Not a Penny More, Not a Penny Less』(Jeffrey Archer著、 St.Martin’s Paperbacks, 1976)


c0077412_2111509.jpgこれは詐欺小説である。昨今世間を騒がせている「〇〇詐欺」が弱い人間をターゲットにしているのに対して、この作品で詐欺に遭った連中は現役ばりばりの、己の知能や良識を自負している男たちなので、悲惨さややりきれなさはない。というよりこの作品は、大金をだまし取られた被害者たちがそのお金を取り戻すために、今度は逆に詐欺師に詐欺を仕掛けるという痛快なエンターテイメント小説なのである。登場人物は以下の通り。
ハーベイ・メトカーフ:ポーランド出身のアメリカ人。貧しい移民の身から、詐欺によって、つまり頭脳ひとつで大富豪にのし上がった。
スティーブン・ブラッドレー:アメリカ人。オクスフォード大の数学教授。対メトカーフのために結成された4人組のリーダー。対メトカーフ作戦が一つ終わるたびに、取り戻した金額と必要経費を計算して記録。
ジェームズ・ブリグスリー:イギリス人貴族。企画力で他のメンバーに後れをとるが、演劇経験を生かして変装や演技指導を担当、貴族という身分による貢献も大。
ジャン・ピエール・フランソワ:フランス人の画廊経営者。絵画の贋作づくりの名人。
ロビン・オークリー・ニコラス:イギリス人。ハーレー・ストリートで開業している医師。
アン・サマード:アメリカ人のフォトジャーナリスト。元モデルで人目を惹く美人。

登場人物たちは、それぞれの出身国や身分の代表であるかのようにわかりやすく描かれている。数学者は理論的でめっぽう数字に強く、貴族は能がなさそうなのに出るところに出れば一目置かれ、フランス人は芸術家風でちょっといいかげん、医者はいかにもセレブ、といった具合。詐欺師にポーランド出身の男を持ってきたのがちょっと気になるが、各国の移民の中から頭の良さで抜てきされた、とも考えられるので、深くは追求しないことにしよう。大富豪になってからはそれなりの品位を備えた人物として描かれていることでもあるし。さて、そんな中でアンという女性は、ブリグスリーが一目惚れした相手、という設定だが、はじめのうちはストーリー展開上特に必要はないけれど彩りのために添えられている、という感じに描かれている。ところが実は、作者は意図的にこの人物の影を薄くしていたのだということが、後の方でわかる。(推理小説の先を読むのは割合得意なのに、まんまとだまされました。)(2014.3.2読了)
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by nishinayuu | 2014-05-31 21:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(3)
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Commented by マリーゴールド at 2014-06-01 17:38 x
ジェフリー・アーチャーはスケールの大きい物語を描きますね。面白そう。映画化されそう、もうされたかな。
Commented by ヌルボ at 2014-06-05 12:05 x
コンゲームの代表的な小説ですね。
私もずっと以前に読みましたが、もちろん翻訳本(「百万ドルををとり返せ! (新潮文庫))です。
原題はこちらの記事で初めて知りました。「百万ドル」ではなく「a Penny」の語が入っているとは!
Commented by nishinayuu at 2014-06-08 10:42
自分たちがそんじょそこらの間抜けではないことを相手に思い知らせるために、「1ペニーの狂いもなく」取り返すことに全力をかけたわけですよね。
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