『五つ星ホテルの24時間』(イモジェン・E・ジョーンズ&匿名著、和波雅子訳、ソニー・マガジンズ)


c0077412_13465879.jpg『Hotel Babylon』(Imogen Edwards-Jones & Anonymous, 2004)
本書はロンドンの高級ホテルの裏側を描いたもので、語り手はこの世界を知り尽くしているベテランのレセプション係、という設定。「プロローグ」によれば、ホテルの名前だけは架空のものだが内容はすべて真実で、実在のホテルマン(匿名の人物)に徹底取材して物語に仕上げたものだという。様々な客が立ち現れて次から次へと問題を引き起こすだけでなく、従業員の間でも大小のトラブルが絶えない。当事者だったらとても身が持たないと思われるすさまじい展開に、いくら何でも、と思ってもう一度「プロローグ」を見てみたら、10年分の出来事を24時間に凝縮した、とあった。それで「内容はすべて真実」といわれてもねえ。
事故や事件はさておいて、それ以外のことで興味深かったのはホテル従業員たちの人種による棲み分け。メンテナンス係は圧倒的にポーランド人が多く、夜間の掃除係は大抵バングラデシュ人で、イギリス人の客室係は絶対にいないのだという。もちろん客にも従業員から見た格付けがあって、歓迎されるのはテキサスの石油王とかアラブの大富豪。もちろんチップをふんだんにばらまいてくれるからだ。これに対して、ホテル側がダブルブッキングしておいて誰かを断らねばならなくなった場合に真っ先に切って捨てるのは「お一人さま一泊のみ」の客で、このため毎度割を食うのが日本人のビジネスマンなのだそうだ(涙)。
それから、ある程度は想像がつくけれどもまさかこれほどとは、とあきれるのが「高級ホテル」がその名を利用してほしいままにしている各種の料金。例えば、アフタヌーン・ティーの場合、ポットのお茶にケーキ数種、お上品なサンドウィッチ、イチゴ2,3個にスコーンとクリーム。これだけ合わせても原価は1ポンド足らずなのに、一人前11ポンド75ペンスで出していて、お茶のお代わりが5ポンド、という具合。しかも最近はめんどうなケーキ作りに時間をかけていられないので、外から買ってくるのだという。おいしくても実はホテルで作ったものじゃない、というわけだ。こんなことを暴露しても、なにがなんでも高級ホテルに泊まり、食事をし、お茶をしたい、という人は後を絶たないだろうから、この作品が営業妨害で訴えられる心配もないだろう。
多彩な登場人物、めまぐるしい場面展開という映像向きの作品で、すでにイギリスのBBCで放送されているという。(2014.2.15読了)
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by nishinayuu | 2014-05-15 13:48 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2014-05-17 23:32 x
人の集まるところに事件ありで、おもしろいですね。私はシンガポールのラッフルズホテルに泊まったことがあります。高級ホテルといっても東南アジアは安いですから。そこのアフターヌーンティーは、日本円で1500円ぐらいで果物ケーキなど種類も多く味もよく、感動的でした。イギリスの食べ物文化はちょっとお粗末ですね。だんごより花の文化なのでしょうか。
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