『老ピノッキオ、ヴェネツィアに帰る』(ロバート・クーヴァー著、斎藤兆史・上岡伸雄訳、作品社)


c0077412_1340957.jpg『Pinocchio in Venice』(Robert Coover, 1991)
19××年のある冬の晩、アメリカ大陸からやってきた一人の老人が、病と時差ぼけと大いなる不安と多大な荷物を抱えてヴェネツィアのサンタ・ルチア駅に降り立つ。この老人こそはかつて木片から作られ、青い髪の妖精の言いつけを守った褒美として人間の子供にしてもらったピノッキオである。まじめに努力を重ね、学問の世界であまたの業績を上げてノーベル賞を二度も受賞し、今や百歳を超えたピノッキオは、人生を振り返り、断片的に著述してきた自伝の最後の章を書き上げるために、故郷に戻ってきたのだ。しかし、世界の魔都と信じられているヴェネツィアに、一般の旅行者が裏玄関だと思っている方から入ってきたのがそもそもの間違いだったのだろうか。ピノキオは到着するなり、「狐」と「猫」にさんざんな目に遭わされてしまう。しかもこれは始まりなのだ。

猥雑で汚らしい情景描写が延々と続くかと思うと、いきなりペダンティックになったり、言葉遊びが始まったりして、決して読みやすい作品ではない。しかもやたらに饒舌で、大部の作品である。それでも途中でやめるのは惜しい、と思わせるものがある。老ピノキオのこれまでの努力は無駄だったのかどうか、彼の行き着く先を見極めないうちはやめられなくなってしまうのだ。大人の読者のための「ピノッキオ」である。(2014.2.2読了)
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by nishinayuu | 2014-04-29 13:40 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2014-05-10 11:32 x
ピノキオはとても愛されているお話なんですね。こんな後日談が書かれるなんて。
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