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『はばたけ!ザーラ』(コリーネ・ナラニィ著、野坂悦子訳、鈴木出版)

c0077412_9115161.jpg『Zahra』(Corine Naranji, 2003)
読書会「かんあおい」2014年1月の課題図書。
副題に「難民キャンプに生きて」とある。主人公は10歳の少女ザーラ。イランのクルディスタン地域から逃げてきたときにはまだ赤ちゃんだったので、ザーラはイラクにあるこの難民キャンプでの生活しか知らなかった。
物語は1989年9月に始まる。早く学校に行きなさい、とお母さんがザーラをせき立てるが、ザーラは気が進まない。前の日、親戚のファティマおばさん一家が遊びに来て、食べたり飲んだり、ファティマおばさんは歌も歌ったりして、とても楽しかったのだが、料理の手伝いで忙しかったザーラは、宿題をする暇がなかったのだ。ムハンマド先生に当てられて答えられなかったら、手を板きれで叩かれる、と思うとなかなか足が進まない。それでもザーラはどうにか学校に間に合って、練習していなかったところもきちんと答えることができた(児童文学の主人公は頭がいいのが原則?)。授業が終わるとザーラは友達のネーダと学校を出る。太陽は真上から照りつけ、あまりの熱気に空気もゆらゆらしているし、くさいゴミ捨て場のあたりにはいつも野良犬がうろうろしている。それでもネーダといっしょにおしゃべりしながら歩く道は楽しい。ネーダと別れてザーラは一人で家に向かう。と、家の方から泣き叫ぶ声が聞こえる。ザーラは足を速め、家の扉に突進し、靴を脱いでスリッパに履き替える。胸がどきどきする。聞こえていたのは、思った通り、母さんの声だった。赤ちゃんの弟レザの具合がまた悪くなったのだ。

この物語には、レザが心配で笑顔をなくしてしまった母親を気遣い、両親が留守のあいだは一家の長女として幼い妹たちの世話をするザーラのけなげな姿が描かれると同時に、イラクの気候風土や難民キャンプの生活環境、クルド人たちの生活習慣などもさりげなく、ふんだんに盛り込まれている。物語が始まる前に「この物語に出てくる国と地域」を示す地図が掲げられ、「難民」とはなにか、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とはなにをするところか、などが平易な言葉で説明されている。物語が先に進むと、ムハンマド先生や村のお医者さんのダヴァイさん、バグダッドの病院のスミス先生、イラクに住む赤十字社のオランダ人スタッフ・アネットさんなどなど、大勢の人たちに助けられて、ザーラの一家に希望にあふれる新しい日々が訪れる。いい人ばかりが登場するいいことずくめの物語ではあるが、児童文学としてはそれが正しい。子供たちに生きる希望を与えることが児童文学のいちばんの使命なのだから。(2014.1.20読了)
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by nishinayuu | 2014-04-21 09:12 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2014-04-25 11:17 x
難民の子供達のことをたくさん読んでいますね。子供という存在それ自体希望ですね。
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