「ほっ」と。キャンペーン

『従順な妻』(ジュリア・オフェイロン著、荒木孝子・高瀬久美子訳、彩流社)


c0077412_14373079.jpg『The Obedient Wife』(Julia O’Faolain, 1982)
作者は短編小説作家ショーン・オフェイロンと童話作家アイリーン・オフェイロンの娘。1932年にロンドンで生まれ、ダブリンの大学で学んだ後、ローマとパリに留学。フィレンツェでアメリカ人の歴史学者ラウロ・マーティンズと結婚後、ロサンゼルスとロンドンを拠点にして活躍している――と訳者あとがきにある。
が、寡聞にして作者の名も、有名だという両親の名も初耳である。訳者あとがきには「日本ではまだあまり馴染みのない作家」とも書かれているので、何となく安心すると同時に、新しい作家を知ったうれしさも感じる。
物語の舞台はロサンジェルス・ビバリーヒルズの北方にあるビバリーグレンの丘陵地帯。科学技術の点では高度に進んでいるが、迷信深い土地柄である。イタリー人一家の主婦・カーラはこの土地で13歳の息子マウリーツィオと二人で暮らしている。夫のマルコが会社から呼び戻されてミラノに戻ることになったとき、カーラは息子の学校のことを口実にこちらに残った。マルコとの結婚生活を続けるかどうか、じっくり考える必要があったのだ。それ以来3ヶ月のあいだ別居が続いている。
マウリーツィオはフランス式のリセに通っている。カーラは同じ学校に5人の子供たちを通わせているシビルと交友があるが、カトリック教徒のくせに子供を教会付属の学校ではなくリセに通わせているシビルを、変わっている、と思っていた。シビルの方はカーラを相手に、司祭のリオへの熱い思いを綿々と訴えるが、カーラはまともに相手にする気にはなれないでいる。隣の家には乳がんで乳房を失った美貌の女性ジェーンがいて、同棲していたポーランド移民のカジミールとの関係に苦しんでいる。カジミールはワンダという若い女のところに走ってしまったのだ。ワンダはだらしない女で、一人娘の育児もほとんど放棄している。マウリーツィオはこの野生児のようなイヴィーにすっかり惹きつけられている。それやこれや、カーラはいろいろやっかいごとに取り囲まれているが、アメリカにもカトリックにも幻想を抱いていないので常に冷静だった。ところがシビルのためにリオに働きかけているうちにリオと接する機会が増え、いつの間にかリオとカーラの間に親密な時間が流れ出して……。

異邦人の目で見たアメリカとアメリカ人が描かれていて、とても興味深い作品である。訳も全体的には読みやすくて良かったが、シビルの口調はちょっと時代がかり過ぎているのではないか。また、〈すべて姦夫に石もて投げよ〉という部分は、〈姦夫を石もて打て〉もしくは〈姦夫に石を投げよ〉ではないだろうか、とちょっと気になった。(2014.1.5読了)
[PR]
by nishinayuu | 2014-04-01 14:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://nishina.exblog.jp/tb/21928839
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 『ネザーランド』(ジョセフ・オ... 韓国ドラマノート-その9(20... >>