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『パライソ・トラベル』(ホルヘ・フランコ著、田村さと子訳、河出書房新社)


c0077412_11565738.jpg『Paraíso Travel』(Jorge Franco, 2001)
物語の語り手はマーロンという青年。コロンビアの中流家庭の一人息子で、アルバイトをしながら両親と暮らしていた。私立大学への進学は経済的に無理、公立大学への進学はずば抜けて優秀な頭脳もコネも持ち合わせていないので無理、という状況の中で、みんなの憧れだったレイナが自分を選んでくれたことだけが支えとなっていた。レイナ(女王という意味)は左右の目の色が違うという目立った特徴と、コロンビア人離れした(?)美貌の持ち主。ニューヨークでキャリアウーマンとして働く、という夢を実現するために父親を捨てるのも厭わない行動的な女性である。このレイナの強い意志に引きずられてマーロンは故郷を捨てる。不法移民を利用して稼ぐ地下組織に大金を支払い、死と隣り合わせの過酷な旅を切り抜けて二人はニューヨークにたどり着く。その直後、ふとしたことでマーロンは迷子になり、レイナと離ればなれになってしまう。英語は一言も話せないのにニューヨークのまっただ中でひとりぼっちになってしまったマーロンの運命やいかに。

大学進学を考える年齢の男でも、言葉も分からずお金もない状態で知らない街に放り出されたら、たちまち迷子になり、ホームレスになり、ぼろぼろになってしまうということは充分あり得る。(『海にはワニがいる』の少年がいかに強靱な精神の持ち主だったかが改めてわかる。)幸いマーロンものたれ死にはしないですむ。マーロンを死の淵から引っ張り上げたのは聖女のようなパトリシア、善良なジョバンニなど、レストラン〈祖国コロンビア〉の人たち、つまり祖国を愛しながらもアメリカで暮らすことを選んだコロンビア人たちだった。
マーロンやレイナを語ることによってコロンビアという国の実態をも描いたこの作品は、コロンビアではガルシア・マルケスの『百年の孤独』以来のベストセラーとなり、映画化、テレビドラマ化され、人気を得ているという。(2013.11.16読了)
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by nishinayuu | 2014-02-16 11:57 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2014-02-20 17:50 x
コロンビアというと、麻薬組織の牛耳っている国という先入観しかありませんが、コロンビアの若者にとってもニューヨークはアメリカンドリームの町なのでしょう。
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