『明日死ぬかも知れない自分、そしてあなたたち』(山田詠美著、幻冬舎)


c0077412_1021267.jpg澄川家は、妻を病気で亡くした誠さんと、夫が別の女性のところに走った美加さん、という傷心の二人が出会って生まれた。長男の澄生と長女の真澄は美加さんの連れ子で、次男の創太は誠さんの連れ子、次女の千絵は誠さんと美加さんの子ども、というちょっと変わった構成になっている。だから澄川家ははじめから非常に微妙なバランスの上に成り立っていたのだが、美加にとって特別な存在だった澄生が17歳のときに雷に打たれて死んだことから美加の崩壊が始まり、家族の平穏な生活も終わる。しかし母親の崩壊という一大事がかえって家族を崩壊から免れさせ、やがては再生へと導いていく。
本書はその家族の歴史を「私」「おれ」「あたし」そして「皆」という四つの章に分けて家族の一人一人に語らせる、という構成になっている。「私」は澄生の2歳下で冷静沈着なしっかり者の真澄、「おれ」は四人兄弟の「中間の子」である上、母親が中心の家庭の中で一人だけ母親と血が繋がっていない、という二つの不利な状況の中で奮闘してきた創太、「あたし」は末っ子でしかも両親の血を引く唯一の子どもという好条件のもとで自由気ままに育った千絵であるが、さて「皆」は?

美加は美しく優しい母親の姿をしていながら澄生への偏愛を正当化してしまう、いわば自己中心的欠陥人間として描かれている。それに対して誠さんは実によくできた夫であり、父親としても申し分ない。そして澄生はあり得ないほど完璧な兄であり、創太はほんとうに素直でいじらしい男の子だ。作者の目は、女性に厳しく男性に優しい、と言えよう。(2013.11.3読了)
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by nishinayuu | 2014-01-27 10:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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