『最後に二人で泥棒を』(E.W.ホーナング著、藤松忠夫訳、論創社)


c0077412_9292466.jpg『A Thief in the Night』(Hornung, 1905)
本書は、クリケットの名選手として活躍する一方で、泥棒稼業もスポーツのように楽しんでいる泥棒紳士と相棒の活躍を描いた3冊のうちの3冊目。1冊目の『二人で泥棒を』、2冊目の『またまた二人で泥棒を』も同じ出版社から翻訳が出ている。
主人公のラッフルズと相棒のバニーは第2冊の最終話でともに第二次ボーア戦争に従軍している。本書は戦場から帰還したバニーが行方不明のラッフルズの思い出を語る、という形になっていて、バニーの観点から見た事件の記録といえる。全部で10のエピソードは殺人や恐怖とは無縁であり、盗みの手口や事件の顛末についてのこと細かな説明よりも、むしろ20世紀初めのロンドンの雰囲気や、ラッフルズとバニーの関係を伝えることに重点が置かれているようである。また二人の関係は、年配の紳士同士だったホームズとワトソンの関係とは大分趣が違っている。年齢のせいか、インドア派とアウトドア派の違いか、とにかくこちらの二人の方がやけに明るくて軽いのだ。それにバニーは、名目上は相棒だが内実は手先というか子分のような存在で(第6話)、ラッフルズの援助がないと暮らしていけないのだという。
ところで、全体の中では些細な部分なのだが終始気になったのは、バニーがやたらにラッフルズと腕を組みたがることと、ラッフルズの方も進んでバニーと腕を組むことだ。「彼が腕を組んでくれないので、ぼくは彼の袖をつかまなくてはならなかった(第1話)」「われわれは腕を取り合ってそこを退去した。でもラッフルズが僕の腕に自分の腕を絡めてきたので、…(第1話)」「(ラッフルズがバニーに)腕を取ってくれたらどうかね。見かけほど汚くはないんだよ(第3話)」「彼は目的地に到達するずっと手前の公道で僕を待っていてくれた。二人は腕を組んで歩いた(第8話)」などなど。当時は男と男が腕を組むのは普通のことだったのだろうか。

巻末の解説によると、作者のアーネスト・ホーナング(1866~1921)は1893年にコナン・ドイルの妹コンスタンスと結婚している。ドイルは妹とその夫の生活を温かく見守るとともに、「犯罪者を主人公にすべきではない」とホーナングに忠告したという。その忠告をホーナングが聞き入れていたら、我々はこの作品に出会えなかったということだろうか。(2013.10.20読了)
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by nishinayuu | 2014-01-07 09:29 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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