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『モンド氏の失踪』(ジョルジュ・シムノン著、長島良三訳、河出書房新社)


c0077412_13165537.jpg『La Fuite de Monsieur Monde』(Georges Simenon)
はたから見れば仕事にも家庭にも恵まれているように思われる男が、地位も名もないただの人になろうと思い立って家出する話。物語はパリのバリュ通りに始まり、3ヶ月あまりのニース滞在を経て、バリュ通りで終わる。
主人公は48歳のノルベール・モンド氏。モントグイユ通りにあるパリでも指折りの安定した会社《モンド商会》の社長である。その彼が誕生日である1月13日にふいにいなくなった、とラ・ロシュフーコー通りの警察に届け出たのはモンド夫人で、夫の失踪には全く心当たりがない、という。しかしモンド氏としては、最初は18歳のときに、二度目は32歳のときに機会をやり過ごしてしまったことを、48になってやり遂げたに過ぎない。18歳のときは遊び人の父が愛人の許に立ち去り、蒼白い顔をした母と二人だけで夕食を取った冬の夜だった。32歳のときは病気にかかっている5歳の娘と飲んだ物を吐き出す時期の1歳の息子を置いて母親が外出してしまった、やはり冬の夜だった。けれどもその2回ともモンド氏は踏みとどまった。彼は努力と献身によって、父親がほとんどつぶしかけた会社を立て直して大きくし、新しい妻を迎えて子どもたちを育て上げたのだ。そして迎えた48歳の誕生日の日、モンド氏はついにこれまでの人生からの逃亡を決行する。過去をすべて振り切るはずだったが、ちょっと不安になって現金34万数千フランをポケットに入れて。

☆興味深い内容なので最後まで楽しめたが、文章はかなり読みにくかった。それはまあいいとして、次のような部分は日本語としてどうなのだろう。校閲が甘かったのではないだろうか。今まで読んだこの出版社の本はわりあい気に入っていたのだが、今回はちょっとがっかりした。
*「そうすればすっかり見違えるわ……ときどき、あたし、いぶかるんだけど」
*「あんた、像のようになってしまったの?」
*男たちが外国人に売りつける類の写真で、それらの写真に採点をつけたり、(後略)
(2013.9.12読了)
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by nishinayuu | 2013-11-21 13:16 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2013-11-23 20:09 x
戻ってきたときに、何を思うんでしょうか。
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