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『夜のサーカス』(エリン・モーゲンスターン著、宇佐川晶子訳、早川書房)


『夜のサーカス』(エリン・モーゲンスターン著、宇佐川晶子訳、早川書房)_c0077412_10362287.jpg『The Night Circus』(Erin Morgenstern,2011)
そのサーカスはいきなりやってくる。(……)高く聳えるテントのストライプ模様は白と黒だけで、金や赤はない。隣接する木々や、周りを囲む野原の草をのぞけば、色らしい色がない。(……)形も大きさもさまざまな無数のテントが、凝った造りの鉄柵によって、色彩のない世界に閉じこめられている。

ゲートにぶら下がった黒い看板には白い文字で、「開場 日暮れ」「閉場 夜明け」と書いてある。そして太陽が地平線の向こうにすっかり隠れて空が暗くなると、ぽんっという小さな音と共にすべてのテントに明かりが灯り、ゲートのてっぺんにネオンサインが現れる。ル・シルク・デ・レーヴ――「夢のサーカス」の始まりだ。そこでは目もくらむような仕掛けやパフォーマンスが観客を待ち受けている。無数のパーツが複雑なダンスをしている時計、広場の中央で燃える大きな篝火、回転木馬、迷路、雲の迷路、氷の庭、アクロバット、タロット占い、奇術、などなど。そしてあたりにはキャラメルとシナモンの甘い香りが漂う。観客たちはテントからテントへと巡り歩いて、夢のような一夜を過ごす。このサーカスを舞台に、熾烈で壮大な闘いが繰り広げられていることに気づく者はいない。

1873年10月のロンドンに始まり、1903年1月のパリで終わるこの物語は、二人の魔法使いがサーカスという場を使ってそれぞれの弟子に技を競わせた一部始終を綴ったものである。さまざまな「不思議な光景」が、これでもか、これでもか、という感じで繰り出される。映画化が決定したということなので、この魔法の数々については映画に任せることにして、登場人物を以下に整理しておく。
プロスペロ:本名ヘクター・ボーウェン。魔法使い。
シーリア・ボーウェン:プロスペロの娘。1873年の時点で5歳。赤毛。ゲームの当事者。
灰色のスーツの男:ミスターA.H. 魔法使い。影のない男。
チャンドレッシュ・クリストフ・ルフェーヴル:サーカスのプロデューサー。
マルコ・アリスデァ:5歳のとき施設から連れ出され、灰色スーツの男に仕込まれる。ゲームの当事者。
マダム・アナ・パドヴァー:通称タント・パドヴァ。サーカス・プロデュース・グループの一員。
イーサン・ヴァリス:技師兼建築家。シーリアとマルコの双方に手を貸す。
バージェス姉妹のタラとレイニー:サーカス・プロデュース・グループの一員。レイニーはイーサンからはパートナーに、タント・パドヴァからは後継者に目されている。
ツキコ:刺青の軽業師。日本人。
ウィンストン・マレーとペネロピ・マレー:赤毛の双子。通称はウィジェットとポペット。
フリードリッヒ・ティーセン:時計作りの達人。サーカス愛好家の会「夢みる人びと」を組織。
ベイリー・クラーク:1897年に昼間のサーカスに忍び込んだ因縁で、1902年、ハーバード進学か農場の跡継ぎかの岐路に立たされる。(2013.8.11読了)
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by nishinayuu | 2013-10-19 10:36 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)

読書と韓国語学習の備忘録です。


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