『失われた薔薇』(セルダル・オズカン著、吉田利子訳、ヴィレッジブックス)


c0077412_9301280.jpg『The Missing Rose』(Serdar Ozkan,2003)
この作品は1975年にトルコで生まれた作者によって2003年に発表されたもの。トルコ国内でベストセラーになり、そののち作者自身によって英訳されて、世界30カ国で読まれているという。
主人公のダイアナはロースクール卒業を控えた美しい娘。母親はサンフランシスコでもっとも格式あるホテルのオーナーであり、ホテルの跡取り娘で街の若者たちの憧れの的であるダイアナは、みんなにちやほやされ、贅沢で優雅な暮らしを楽しんでいた。母の命が長くはないと知らされた5ヶ月前までは。そして母親は1ヶ月前にダイアナを残して死んでしまったが、死の前日、死んでから読むように、と言ってダイアナに1通の手紙を渡していた。その手紙には――死んだことになっている父親は実は生きている。そしてダイアナには双子の妹がいる。24年前、父親は双子の妹のメアリを連れて出て行った。それ以来音信はなかったが、つい最近、父親から、メアリが母親に会いたいと言って出て行った、という知らせが入った。メアリは母と一緒に暮らせないなら死んでしまいたいと言っている。メアリが命を絶つ前に見つけ出して面倒を見てやってほしい――という母親からの切々たる願いが綴られていた。
こうしてダイアナは、メアリが残した三つの名前、「ゼイネップ」「ソクラテス」「トプカプ宮殿」をたよりに、ダイアナはメアリ探しの旅に出る。それは亡くなった母親に再び会うための旅であり、本当の自分を見つける旅でもあった。

訳者後書きに「ある面ではミステリーで、ある面ではおとぎ話、ある面では心理ドラマでもある。『アルケミスト』や『星の王子さま』が好きならば、この物語もきっと好きになる」という評が引用されている。評の前半はさておき、後半は疑問だ。というのもnishinaは『アルケミスト』も『星の王子様』も大好きだが、この作品は残念ながら心に響いてこなかったからだ。理由の一つは、登場人物たちがみんな同じトーンで話しているように感じられ、個性がくっきりと立ち現れてこないことにあると思われる。エピタフとしてウィリアム・ブレイクの『病める薔薇』が掲げられていて期待をかき立てられたのが、かえってよくなかったのかもしれない。(2013.7.24読了)
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by nishinayuu | 2013-09-30 09:32 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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