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『サレーダイン公爵の罪業』(チェスタートン著、直木三十五訳、平凡社)


c0077412_16522947.jpg『The Sins of Prince Saradine』(Chesterton, 1911)
物語は探偵のフランボーが1ヶ月の休暇を取り、ヨットに乗って旅に出るところから始まる。今はウエストミンスターに事務所を構えているフランボーだが、昔はパリで活動していて、その地のもっとも有名な人物として多くの讃辞や謝辞を受け取った。そのひとつにイギリスの消印のある封筒があり、中には「現代のあらゆる立派な人物にはもはや会い尽くしたので、いつかあなたにお会いしたいものです。あなたが探偵をまいて見当違いの逮捕をさせる手際はフランス史における最も光彩ある場面です」と書かれた名刺が入っていて、名刺の表には「公爵サレーダイン、蘆の家、蘆の島、ノーフォーク州」と印刷されていた。これが記憶にあったフランボーは、ノーフォークの広沢地方(東部の湿地帯)に行ってみることにする。フランボーが旅に備えてヨットに積んだのは、「鮭の缶詰、何挺かのピストル、一壜のブランデー、そして、ひょっこり死なないとも限らないので一名の坊さん(師父ブラウンのこと)」である。
さて、フランボーとブラウンが訪れたサレーダイン公爵の屋敷には次のような人たちがいた。給仕頭のミスター・ボウル(陰気なタイプのひょろ長い男で、ごま塩頭。家令か侍従のように尊大)、家政婦のアンソニー夫人(威風を備えた美貌の持ち主で、イタリア訛がある)、それから当主の公爵(白い帽子、黄色い胴着、黄色い手袋という、役者の扮装のようないでたちで外から戻ってくる。世事に長けてはいるがそわそわしていて、信用のおけない感じ)。彼らを観察したブラウンは、公爵は客のもてなしはうまいが家政には疎い様子であること、ミスター・ボウルは家政全般を任されていて、まるで公爵の法律顧問のようであること、アンソニー夫人はおどおどしていて、日陰の女のようであることに気づく。
ところでブラウンはミスター・ボウルから、公爵は弟の大尉からひどい仕打ちを受けている、という話を聞き出したので、アンソニー夫人にそのことを確かめると、夫人は、兄弟はどちらが悪人でどちらが善人ともいえない、兄弟二人とも悪人だ、と言うのだった。
そこへ新たな人物が登場する。シシリア人のアーントネリという青年が、母を盗み取り父を崖から突き落とした、として公爵に決闘を申し込んできたのだ。公爵は、アンソニー夫人と同じ陰鬱な茶色の目をしたこの青年にあっけなく殺されてしまう。遅ればせに到着した警官にアーントネリが連行されるや、ミスター・ボウルは前まえから整えられていた食卓について、美味を食らい、かつ美酒を飲むのだった。
公爵に勧められて舟で釣りに出ていたため何も知らなかったフランボーに、ブラウンが事の次第を説明してから言う。これは君の「探偵をまきて見当違いの逮捕をなさしむる手際」に知恵を借りた犯罪だ、と。(2013.6.17読了)

☆「(ゴイサギが)小児の打ち出す豆太鼓のようにポコボン、ポコボンと啼いていた」という部分があります。原文ではどんな表現なのか、また日本では普通どう表現するのか知りたくなりました。
☆この作品は「青空文庫」で読みました。青空文庫の底本は平凡社の『世界探偵小説全集 第9巻ブラウン奇譚』だそうです。
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by nishinayuu | 2013-08-22 16:52 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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