『マンゴー通り、ときどきさようなら』(サンドラ・シスネロス著、くぼたのぞみ訳、晶文社)


c0077412_11485169.jpg『The House on Mango Street』(Sandra Cisneros,1984)

この作品の舞台はアメリカ合衆国の南西部に位置する架空の町。プエルトリコやメキシコから憧れの国アメリカにやってきた人たちが住む移民の町だ。語り手のエスペランサは次のように語り始める。

わたしたちはずうっとマンゴー通りに住んでいたわけじゃない。まえはルーミスの三階に住んでいたし、そのまえはキーラーだった。キーラーのまえはポライナにいて、そのまえのことはおぼえていない。よくおぼえているのは引っ越しばかりしてたってこと。引っ越しのたびに家族がひとり、ふえていたような気がする。マンゴー通りに越してきたとき、家族は六人になってた。ママ、パパ、弟のカルロス、キキ、妹のネニー、それにわたし。

移民たちは少しでも暮らし向きがよくなれば「もっといい家」を求めて引っ越しをする。だから語り手の一家も何度も引っ越しをしてマンゴー通りにたどり着いたのだが、いずれはここも出て行くつもりでいるのだ。そんなマンゴー通りにはいろいろな人が住んでいて、いろいろなことが起こる。
猫をいっぱい飼っていて、少し北の方に越していったキャシー。スペイン語と英語の名前を持つ犬といっしょにその家に越してきたメメ・オルティス。テキサス生まれのルーシーとその妹のレイチェル。プエルトリコ人のルーイとその従姉と従兄。誰かが人生を変えてくれるのを待っているマリン。子どもが多すぎて手におえないロサ・バルガス。空を飛ぶ練習をして地面にたたきつけられたアンヘル・バルガス。大学に行っている優等生のアリシア。アルバイト先で知りあった東洋人の年配の男。エスペランサの詩をじっと聞いてくれて、書き続けるのよ、と励ましてくれたルーペおばさん。英語も話せない密入国者で、ひき逃げされて死んでしまったジェラルド。テネシーから来たアール。チンピラのサイア。太りすぎているからか、英語が怖いからか、とにかく外に出てこないママシータ。夫に監禁されて甘いジュースばかり飲んでいるラファエラ。夫が何度も出て行ってしまって不幸せなミネルヴァ。美しすぎるせいで父親に殴られ、父親から逃げるために結婚したら今度は夫から家に閉じこめられるサリー。
上掲の引用文の言葉遣いや文字遣いから想像できるように物語の冒頭ではまだ幼さの残る少女だった語り手は、マンゴー通りでの様々な見聞や体験を通して成長していき、やがてマンゴー通りを出て行く日を思い描くようになる。(2013.6.6読了)
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by nishinayuu | 2013-08-13 11:49 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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