『Reginald』(H.H.Munro, Doubleday & Company,Inc.)


c0077412_1815617.jpgこれはDoubleday発行の『The Complete Works of Saki』の最初に掲げられている作品である。作者のMunroはビルマ生まれの英国人(1870~1916)で、エドワード七世(在位1901~1910)時代の香が漂う作品、特に上流社会のあれこれを風刺的に描いた作品を多く残している。SakiはMunroのペンネームである。
ところで、『The Complete Works of Saki』の冒頭にNoël Cowardが1967年に書いた紹介文がある。その中で彼は、自分が子ども時代に親しんで影響を受けたのはSakiとNesbitだが、それから50年以上経った今の時代、読書人の多くはSakiなんて聞いたこともないだろう、と言っている。1967年にしてすでに英語圏でもほとんど忘れられた作家だったのだ。英語圏でさえそうなのだから日本ではなおのこと知る人は少ないと思われるが、「ちくま」や新潮から文庫版の翻訳がでているところをみると、ある程度は読まれているらしい。教科書で“The Open Window”を読んでファンになった人たちもかなりいるようだ。
さて『Reginald』は、語り手がガーデンパーティに花を添えるつもりで連れて行った青年・レジナルドが、パーティーの参加者たちの気分を害してしまい、語り手も面目を失ってしまう話である。レジナルドはハンサムで洗練された趣味の持ち主ではあるけれど、年長者たちに不愉快な思いをさせるのを喜びとしている人物なのだ。ハイライトはレジナルドが“What did the Caspian Sea?”と問いかけて一同を茫然とさせる場面(数行あとに語り手によるWhat did the Caspian seeという解説的言い換えが出てくる)。
短編なのでストーリーというほどのものはなく、さっと読み終えることができる――と言いたいところだが、“The Open Window”に比べるとそうとう手強い作品である。注釈書や翻訳が出回っているシェイクスピアより手強いかもしれない。調べてわかったところを注がわりに以下に記しておく。

San Toy――中国を主題にしたミュージカルで、1899年にロンドンで初演された
Diamond Jubilee――ヴィクトリア女王在位60年の式典(1897年)
The Eternal City――Hall Caineによる小説(1901)。なお、eternal cityとはローマのこと
Poona――デカン高原にある都市プネーの英語読み。
Zaza――フランスの作家による不倫劇
The War in South Africa――ボーア戦争(1899~1902)
(2013.5.21読了)
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by nishinayuu | 2013-07-29 18:02 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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