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『秘密の庭』(チェスタートン著、直木三十五訳、平凡社)


c0077412_14294043.jpg『The Secret Garden』(Chesterton)
物語の舞台はパリの警視総監の家で開かれた晩餐会。「家の中からの出口はたくさんあるが、庭から世の中への出口がない」という、いってみれば密室状態の庭で起きた殺人事件を、捜査のベテランである警視総監ではなく、さえない小男のブラウンが見事に解決する。人物や場所の描写が丁寧で楽しめるし、ストーリー展開も納得できる、安心して読めるミステリーである。登場人物は以下の通り。
ヴァランタン:パリの警視総監。犯人の追跡には無慈悲だが、刑罰には寛大な人物。
イワン:ヴァランタン邸の老執事。
ガロエイ卿:英国大使。かんしゃく持ちの老人。
ガロエイ夫人:鶴のような姿の上品な女性。
マーガレット・ブレーアム:ガロエイ家の娘。いたずらっ子風の少女。
モン・サン・ミッシェル公爵夫人と二人の娘
シモン博士:尊大な医学博士。額に太い皺がある。
ブラウン師父:英国エセックス州コブホールの僧侶。
オブリアン:フランス遣外駐屯軍司令官。アイルランド生まれでガロエイ家とは古い知り合い。借金を踏み倒してフランスに逃亡し、イギリス風礼儀はすっかり忘れている。
ジュリアス・ケイ・ブレイン:晩餐会の主賓。ヴァランタンが大探偵旅行を企てたときに知己になった男で、数百万ドルの財産家。本文の人物紹介に「彼は何によらず進歩的と考えられる物が好きであった。彼はヴァランタンを進歩的な男だと思った――それが恐るべき間違いの原因となった」とある。

さて、事件というのは――オブリアンが娘のマーガレットに近づくのを怖れたガロエイ卿が書斎のある裏手の方に行くと、マーガレットが真っ青な、侮辱を受けたような顔をしてばたばたと駈けだしてくるのに出遭う。オブリアンはどこに?と家の奥の方に入っていくと、庭に通じる勝手口があった。青い服の丈の高い姿(オブリアン)が庭を横切って書斎の方に歩いて行き、建物の中に消えるのを見てあとを追ったガロエイ卿は、草の中で木か石のようなものに足を引っかける。首と胴体が切り離された男の死骸だった。晩餐会の客たちのだれも見覚えのない男だったが、晩餐会に出席するはずの客だったことは服装が夜会服であることでわかった。ヴァランタンの指示で一同が書斎に集まってみると、ブレインの姿が消えていた。さて犯人はオブリアンなのか、ブレインなのか、それとも……?(2013.3.15読了)
☆この本は青空文庫で読みました。青空文庫の底本は「ブラウン奇譚」(平凡社、1930)です。
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by nishinayuu | 2013-05-24 14:31 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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