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『火のくつと風のサンダル』(ウルズラ・ウェルフェル著、関楠生訳、学研)


c0077412_15234916.jpg『Feuerschuh und Windsandale』(Ursla Wölfel)
「新しい世界の童話シリーズ」の一冊。といっても50年前ごろから始まったシリーズなので、今となっては別に新しくはないのだが、ファージョンの「町かどのジム」、プロイスラーの「小さい魔女」、ブリョイセンの「小さなスプーンおばさん」などの創作童話を大塚勇三、渡辺茂男ら定評のある訳者が翻訳している信頼できるシリーズである。1922年生まれの作者によるこの作品は、1962年にドイツ児童図書大賞を受賞している。
もうすぐ7つになるチムは組じゅうで一ばんのでぶで、学校中で一ばんのちび、おまけに貧乏な靴屋の息子だ。チムの家は地下にあって、靴直しを頼みに来るお客さんは階段を下りてやって来る。お父さんは面白い話をするのが上手で、チムやお母さんに旅回りの靴直しをしていた頃のお話をよくしてくれる。おかあさんはそんなお父さんといるのが嬉しくて、貧乏などはちっとも気にせずに、一日じゅう笑ったり歌を歌ったりしている。チムも、そんなお父さんとお母さんが大好きだ。それでもチムは自分がもっと違う人間だったらいいな、と思ったりする。
そんなチムのために、両親は特別の誕生日プレゼントを用意する。誕生日の朝、テーブルの上には子供用の赤い靴と大人用のサンダル、大小二つのリュックサックが置いてあった。赤い靴とサンダルはお父さんが作ったもので、リュックサックはお母さんが作ったものだ。お誕生日のプレゼントは、それらを身につけ、新しい名前で旅をすることだった。こうして夏休みに、赤い靴を履いて「火のくつ」と名告るチムと、サンダルを履いて「風のサンダル」と名告るお父さんは、ふたりで4週間の旅に出る。

いわゆる知識人ではないけれども広い教養をもっていて、それをおもしろおかしく伝えるという技も持っているすてきなお父さん、ゼラニウムの花のように明るいお母さんと、ふたりのもとで伸びやかに育つ少年を描いた爽やかな児童文学作品である。たくさん挿入されている挿絵(久米宏一画)も作品の雰囲気にぴったりですばらしい。(2013.3.7読了)
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by nishinayuu | 2013-05-15 15:24 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2013-05-18 12:30 x
楽しい旅になりそうですね。
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