『幕末銃姫伝』(藤本ひとみ著、中央公論新社)


c0077412_20192267.jpg読書会「かんあおい」2013年3月の課題図書。
NHKの大河ドラマで取り上げられてちょっとしたブームになっている新島八重(山本八重)の物語で、ドラマの原作(2012)より前(2010)に書かれた作品である。
1845年生まれの八重が12歳になった年から物語は始まる。藩校・日新館で学ぶ幼なじみの山川大蔵(おおくら)、江戸遊学から3年ぶりに戻ってきた兄の覚馬、弟の三郎などに勝るとも劣らぬ健康な身体と意欲を持ちながら、女としてのたしなみを押しつけられることに反発する八重。後の男勝りのハンサムウーマンの原型がここにある。
やがて会津は幕末の嵐に巻き込まれていく。佐久間象山のもとで学んだ兄の覚馬が早くから公武合体と開国を藩に進言していたこと、藩の優等生である大蔵は佐幕派で攘夷論者だったこと、などの政治的な話と並行して、人々の日常が綴られていく。そこから見えてくるのは、よく言えば生真面目な、はっきり言えば融通の利かない会津藩の上層部の、時代が読めない頭の固さであり、そんな連中の論理によって穏やかな日常を奪われていく人々の姿である。会津に吹き荒れた嵐の中で、大勢の人々が外の世界を知る機会もなく散っていったが、一方で自分なりに精いっぱい闘ったあと、自分の道を見つけて新しい世界に踏み出していった人々もいる。前者の中には玄武隊の隊員だった八重の父、朱雀隊の隊員だった弟の三郎、白虎隊の隊員だった隣家の少年・悌次郎、山川大蔵の妻・登勢などがおり、後者の中には兄の覚馬、夫の川崎尚之助、そして山本家の女たちがいる。
特に印象的なのは八重を取り巻く以下の4人の男たち。
兄の覚馬――藩の砲術指導者であると同時に、思想・学問の指導者でもあった。早くから八重の武術や学問の才能を認め、八重の生き方を支援した。
山川大蔵――器量よしではない八重をずっと女性として愛した人物。八重の方も秘かに思いを寄せていた。
梶原平馬――大蔵とは別のやりかたで、やはり八重を女性として見ていたが、八重は反発するばかりだった。八重の砲術の腕を買って、最後の闘いの際に八重を起用した。
川崎尚之助――事情があってある藩から会津に流れてきた男。覚馬に弟子入りした縁で八重と結婚。常に八重を立て、自分は引っ込んでいるので、八重は軟弱で頼りない男と見ていたが、真に八重を女性として大切にしていたのはこの人物だったのかもしれない。もとの藩を出たときに意地もこだわりも置いてきたのか、恬淡を絵に描いたような人物である。(2013.2.12読了)
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by nishinayuu | 2013-04-21 20:19 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2013-04-23 14:20 x
会津藩を見ていると、第二次世界大戦を戦い、戦後の日本の復興に賭けた世代の日本人と二重写しになります。生き残った人たちの意地はやはりすごいし、会津魂を感じますね。
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