『眠りをむさぼりすぎた男』(クレイグ・ライス著、森英俊訳、国書刊行会)


c0077412_2153789.jpg『The Man Who Slept All Day』(Craig Rice)
ある週末、豪邸・レイヴンズムーアでパーティーが催される。集まったメンバーは以下の通り。
フランク・フォークナー――豪邸の持ち主。いささかチャーミングすぎ、愉快すぎ、気まぐれすぎ。
ジョージ・フォークナー――フランクの弟。中傷と悪ふざけで客たちを不快にさせる。
マリリー・ディクソン――溌剌とした若い女性。物語は主としてこの人物の視点で展開する。
トム・ディクソン――マリリーの夫。新進気鋭の弁護士。
ヴァーナ・ローリンソン――30代の慎み深い女性。
クリフ・ローリンソン――ヴァーナの夫。物静かな英国紳士。
キッテン・ライリー――気さくで飾り気のない女性。元コーラスガール。
リーノ・ブラウン――キッテンの恋人。刑事弁護士。
メルヴィル・フェア――灰色ずくめのまったく目立たない小男。連れはいない。
ブレットソン――フォークナー家の執事。元役者で「飲んだくれの執事役」を楽しんでいる。
早朝、みんながまだ寝静まっている時間に目を覚ましたマリリーは、スリッパが見あたらないのに気がつく。向かいにあるジョージの部屋のドアが開いているのでふと覗くと、なんとジョージのベッドの脇にそのスリッパがあった。スリッパを取り戻そうとジョージのベッドにそっと近づいてみると、ジョージは首にナイフを突き立てられ、血まみれになって死んでいた。マリリーはとっさの判断で、ジョージの死体を発見したことを黙っていることにする。前の晩、夫のトムがジョージの言動に激高して「いつかきっと殺してやる」と言っていたからだ。マリリーはシーツを引き上げてジョージの顔を隠して部屋をでる。
このあと客たちは一人、また一人とジョージの部屋にやってくる。誰もが「人に知られてはまずい品物」をジョージに握られていたからだ。そして彼らはみな肝心なものは見つけられずにジョージの死体だけを発見し、彼がまだ寝ているかのように顔の上にシーツを引っ張り上げて部屋を出る。だれもが、「人に知られてはまずい品物」を確保しない限りジョージ殺しの疑いは確実に自分に降りかかってくる、と思いこんでいるので、ジョージは「眠りをむさぼっている」ということにされたまま、時が過ぎていく。

2011.11.20に読んだ『もうひとりのぼくの殺人』に次いで2冊目のクレイグ・ライス。『もう一人の』のほうはもっとスピード感があったように記憶しているが、こちらの作品は少々テンポが遅くてまどろっこしい。ただ、一人一人の人物が丁寧に描かれているので、決して退屈ではない。特に愉快なのは「灰色ずくめの小男」で、実はこの男、パジャマは青と黄色の縞の入った派手なものを持参していて、家にはそれよりもっとお気に入りの鮮やかな赤のパジャマや、オレンジの玉縁のついた紫のブロケードの部屋着をおいているという。それでも、見晴らし亭に取り残されたカップルの救出に向かったときに「メルヴィル・フェア氏の借りたレインコートは例によってグレーだった」という。(2013.2.6読了)
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by nishinayuu | 2013-04-18 21:55 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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