『リメンバー』(バーバラ・T・ブラッドフォード著、尾島恵子訳、小学館)


c0077412_13205154.jpg『Remember』(Barbara Taylor Bradford)
主人公のニッキーは28歳のジャーナリスト。美貌と行動力を兼ね備えた才媛で、不思議な魅力の持ち主、ということになっている(無敵ですね)。相手の男性は二人。物語の時間の中で古い方がチャールズ・ドブローというイギリス貴族の血を引く魅力的な男性で、ニッキーと恋に落ちて婚約したのに、結婚の直前に謎の自殺をしてしまう。それが3年前のことで、その1年後にレバノンでの取材中に出会ったのが、パリを拠点に活動する戦争写真家のクレー・ドノバン。すでにフォトジャーナリズムの主だった賞を総なめにしている青年だった。
このときニッキーは「なんて普通の人なんでしょう」と嬉しくなって彼に好感を持ったが、「いわゆるハンサムではないことも好感を持った理由だった」とある。ところがアテネに滞在していたときニッキーは、雑誌の表紙になっているケビン・コスナーをクレーと見間違えている。「写真で見る限り、クレーとコスナーは瓜ふたつといっていいくらい似ていた」という(これはまあ、コスナーはいわゆるハンサムではない、ということなのかと納得しておく)。しかし、さらに後にパリで出会ったときには「久しぶりに会った彼がほれぼれするほどハンサムなので」とあり、なんていいかげんな、という感じの人物描写なのである。あるいは、ニッキーがしだいに恋に目がくらんできたことを示す文学的技巧なのだ、と好意的に解釈すべきなのだろうか。
それはさておき、ニッキーとクレーがいよいよ結婚を考え始めたとき、テレビのニュースを見ていたニッキーが画面の中にちらっとチャールズが映っているのを見つける。自殺したといっても、死体は見つかっていないのだ。チャールズは生きているのか、もしそうならなぜ突然姿を隠したのか。
冒頭に天安門事件が配され、ソ連崩壊やヨーロッパ統合を控えた世界情勢やら、イスラエルのモサドとパレスチナのテロ組織の影やらもちらつかせているが、それらはあくまでも背景の一つで、主要なテーマは、華やかなキャリアウーマンの贅沢なラブストーリーである。
冒頭にChristina Rossettiの詩Rememberの訳(超訳?)が掲げられている。原詩は以下の通り。
Remember me when I am gone away, / Gone far away into the silent land; / When you can no more hold me by the hand, / Nor I half turn to go, yet turning stay. / Remember me when no more day by day / You tell me of our future that you plann’d: / Only remember me ; you understand / It will be late to counsel then or pray. / Yet if you should forget me for a while / And afterwards remember, do not grieve: / For if the darkness and corruption leave / A vestige of the thoughts that once I had, / Better by far you should forget and smile / Than that you should remember and be sad.

(2013.1.16読了)
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by nishinayuu | 2013-03-20 13:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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