『ビューティフル・ファミリー』(トニー・パーソンズ著、小田島恒志・小田島則子訳、河出書房新社)

c0077412_13292051.jpg『Man and Wife』(Tony Parsons)
この作品は一言で言えば、何も考えずに楽しめばよいエンターテインメントである。主人公のハリーは仕事も家庭も大切にする男性。なによりもその父性愛の強さが印象的である。彼を取り囲む女性たち――別れた妻のジーナ、新しい妻のシド、シドの連れ子のペギー、日本人写真家のカズミ、そして年取った母親――は誰も彼もとびきりの美人である。そしてハリーが愛して止まない一人息子のパッドは、だれもが目を見張るほど抜群に美しい子どもである。まさに邦題通りの家族なのだ。
ただしハリーとしては毎日が苦労の連続で、気が休まることがない。なぜならハリーは自分の愛する息子と週末にしか会えないので、溢れる愛情を息子に注いでも息子から愛されているという確信が持てない。一方、新しい家庭では父親として認めてもらえず、ペギーは気まぐれにやってくる本当のパパに夢中だ。だからハリーは本当の父親という立場でもあり義理の父親という立場でもあるのだが、だからといって同じような立場の男たちに共感するというわけにはいかず、パットの義理の父親にもペギーの本当の父親にも猛烈な嫉妬を感じている。男たちには共感できないハリーだが、本当の親と引き離され、義理の親を押しつけられる子どもたちのほうがもっと辛い目に合っている、ということはよく承知している(こういうことをハリーに言わせているところがニクイ)。しかもハリーは今、世界一美しい女性であるシドともしっくりいかなくなっており、日本女性のカズミに惹かれ始めている。
なぜなのか。麻薬中毒患者の友人がハリーに言う。「あんたは酒飲みじゃない。それにドラッグだってやらない。でも、あんたも同じじゃないか。あんたは女だ。」 そう、ハリーは一人の女性と始まったときに味わう感覚――生きているという実感、求められているという実感――そういう感覚の中毒になっているのだ。そんなハリーがどうやって危機を脱するかというと……
結末はありきたりというか、安易というか、あまり納得できないのだが、大ベストセラーになったということは、これでよし、と考える人が多いということなのだろう。(1月10日読了)
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by nishinayuu | 2013-03-10 13:30 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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