『青い壺』(有吉佐和子著、文藝春秋)


c0077412_160596.jpg読書会「かんあおい」2013年1月の課題図書。
有吉佐和子が40代の時に書いた作品で、最近復刻されて手に入りやすくなったとか。いつも本の冊数不足に悩まされる我が読書会にとってはありがたい本であった。
全部で13の章に分かれていて、どの章にも同じ一点の青い壺が登場して全体を繋ぐ役割を果たしているが、1章ごとに完結する短編としても読めるようになっている。有吉佐和子という作家のすばらしさを再認識させられる作品である。
第一話の主人公は磁器制作者の牧田省造。デパートから依頼された一点物の焼き物が、会心の青に仕上がった。道具屋の安原は、この青い壺が唐物に見えるように古色をつけろ、と言う。決断がつかず悩んでいる夫を見かねて、妻の治子は青い壺をデパートに渡してしまう。
第二話で青い壺はある会社の副社長に贈られる。定年退職した男の妻がデパートで2万円で買い求めて贈ったのだ。退職した夫をもてあます妻も哀れだが、壺を持って出向いた会社で異常な行動を見せる夫は格段に哀れ。
青い壺は第三、第四話で副社長の家で花器として使われたあと、第五話では副社長夫人の稽古仲間、千代子の手に渡っている。千代子は目が見えなくなった母親を都立病院に連れていき、手術を受けさせる。手術は成功し、母親は目が見えるようになったが、65歳以上なので手術も入院も無料だった(そういう時代もあったのですよね)。母親が病院の石田先生にお礼がしたいというので、青い壺を渡す。
そのあと青い壺は、第六話で石田の勘違いからバーのマダムに渡され、第七話でまた石田家に戻され、第八話でさらにそこから盗み出され、第九話で京都は東寺の縁日に現れる。それを東京から70歳記念の同期会にやって来た弓香が3000円で手に入れる。
第十,十一話に登場するのは弓香の孫の悠子。ミッションスクールで栄養士として働く悠子は優しいシスター・マグダレーナがスペインに一時帰国することになったとき、手みやげとして青い壺を渡す。青い壺はスペインに渡ってしまったのだ。その壺は第十二話で病院の掃除婦をしている森シメが501号室で目にする。シメが掃除のときに触ろうとするとその患者に怒鳴られる。
そして第十三話。501号室の患者だった園田先生は香合を届けに来た省造にスペインで見つけた青い壺を見せ、800年前の南宋浙江省の竜泉窯だ、と言う。それは10年前、省造が40代半ばの時に焼いたあの青い壺だった。そのことを省造が告げると、自分の眼を信じる園田は頑として省造のことばを退けるが、心の内では動揺する。もちろん省造も譲らない。しかし帰りの列車が名古屋を過ぎたころ、省造は思うのだった。あの壺にいつの間にあんなにいい古色がついたのか。その壺に10余年ぶりに巡り合えたことを喜ぶべきだと。(1月6日読了)
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by nishinayuu | 2013-03-07 16:01 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2013-03-09 18:41 x
いい終わり方ですね。
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