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『The Star Child』(Oscar Wilde, Illustration by Charles Mozley, Bodley Head)


c0077412_15364373.jpgA House of Pomgranates(1891出版の童話集)の中の1編。
物語は「昔々、貧しい樵夫がふたり、松林の中を家に向かっていました」と始まる。季節は冬、時間は夜。深い雪に閉ざされた森の中で、動物たちや小鳥たちさえなすすべもなく、異常な寒さの意味を説明しようと試みたり、政府の無策を罵ったりするばかり。ただひとりフクロウたちだけは、黄色い目玉をぐるぐるさせながら飛び回り、この寒さを楽しんでいる。――ここまでが導入部。
さて、樵夫たちは雪と氷に足を取られてこけつまろびつ、やっとのことで森の外れにたどり着く。遠く谷間の村の灯りを目にしてふたりは声を上げて笑う。が、そのとたんに自分たちの貧しさを思い出して、いっそのことここで凍え死ぬか獣に食われてしまったほうがましかもしれない、とみじめな境遇を嘆き合っていると、空から非常に明るい星がすごい勢いでふってきて、すぐ先の柳の向こうに落ちる。大変な宝物に違いない。二人が駆け寄ってみると、何枚もの金の布地にくるまれた赤ん坊だった。ひとりの樵夫は、自分たちは貧しくて自分の子どもを養うのがやっとなのだから、このまま捨てておこうと言うが、もうひとりは子どもを抱きあげる。そして家に着くと、あきれて拒絶する妻に言う。「だけど、これは星の子なんだよ」と。こうして樵夫の子どものひとりとして大きくなった星の子は、だれよりも美しい子どもに育った。しかし美しいのは容貌だけで、邪悪な心を持った手に負えない子どもだった。

その後、星の子の運命はキリスト教圏の子どもの読み物らしく、やや教訓的な展開を見せるが、それなりに感動的でもある。文体は古めかしく、樵夫たちでさえthou artとかnayなどのことばを使ってやりとりしている。なんとなく教養を感じさせる樵夫たちなのである。(1月1日読了)
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by nishinayuu | 2013-03-04 15:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(2)
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Commented by マリーゴールド at 2013-03-04 17:44 x
作者がオスカーワイルドというところが悪魔的な人物を予感させますね。日本では「竹取物語」という惜しまれつつ月に帰る女の子の物語ですが、生まれは同じようでも悪い子の話なのですね。
Commented by nishinayuu at 2013-03-07 16:17
それがね、悪い子が劇的によい子に変身するのですよ。それで「教訓的な展開」と書いたわけです。
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