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『ひかりのあめ』(フランチェスカ・リア・ブロック著、金原瑞人・田中亜希子訳、主婦の友社)


c0077412_145444.jpg『Wasteland』(Francesca Lia Block)
著者はウィーツィ・バット ブックスなどのヤングアダルト小説の名手で、ロサンゼルス在住。
この作品はロサンゼルスのヴァレー地区に住むレックスとマリーナという兄妹を主人公に据えて、愛の幸福と葛藤、喪失と再生を描いたものである。
原題はT.S.エリオットの詩『荒地』から取られており、訳者によると作中の随所にエリオットの詩から取られた語句が嵌め込まれているという。ただし、それらの語句には気づかなくても読み進めることはできる。それよりも、のっけから何かを象徴するような、あるいは暗示するような話者不明の一節をつきつけられ、そのあとも話者や視点がくるくる入れ替わって何かをつぶやく、という形式に、はじめは戸惑う。なんとかこの形になれて、状況もつかめてきたあたりで、今度は話の内容が何か怪しい雰囲気になっていくので、またまた戸惑うことになる。ところがもう一人の主人公ウェストが現れたあたりから戸惑いはすっと消え、若者たちの心の痛みが手にとるように見えてくる。読後感も清々しい。
要するにこの作品は、タイトルだけでなく形式も『荒地』を念頭に置いて書かれた長編詩のような小説、と考えるとわかりやすい。実は話者の交代も、きちんと区別できるように、レックスの語っている部分は太字のゴシック体になっている(翻訳書では)。ただし一箇所、レックスのことばではないけれど太字のゴシック体になっている部分がある。これはペリクリーズの娘マリーナの生還を詠ったT.S.エリオットの詩「マリーナ」で、『ひかりのあめ』のマリーナの再生を暗示・予告する形になっている。(2012.12.5読了)
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by nishinayuu | 2013-02-05 14:55 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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