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『めぐりめぐる月』(シャロン・クリーチ著、もきかずこ訳、講談社)


c0077412_9514888.jpg『Walk Two Moons』(Sharon Creech)
著者はオハイオ生まれで現在は英国サリー州に在住。この作品で1994年度のニューベリー賞を受賞している。
語り手は13歳のサラマンカ。母方からインディアン(彼女も母親も先住民ということばには違和感をおぼえている)の血を引いている。ケンタッキーの自然が溢れる田舎町バイバンクスで育ったが、母親が突然家を出てしまったあと、父親に連れられてオハイオ州ユークリッドに転居してきた。そこで父はマーガレットさんという派手な赤毛の女性と親しく付き合い、サラマンカはマーガレットさんの家の隣に住む、恐るべき想像力の持ち主、フィービィ・ウィンターボトムと親しくなる。
オハイオに来てから1年たった頃、父方の祖父母がサラマンカをアイダホ州のルーイストンまでのドライブに誘った。「アメリカのあれこれが見られるんだぞ!」というおじいちゃんと、「旅行のあいだじゅう、かわいいひよこっこといっしょにいられる」とよろこぶおばあちゃん。ルーイストンは1年前に母が目指した場所だった。「母に会いたい、けれどこわい」と思っているサラマンカの気持ちを二人は知っていてドライブに誘ったのだった。こうして三人はおじいちゃんの運転で2000マイル(約3200キロ)の旅に出る。サラマンカは7日後に迫っている母の誕生日8月20日には目的地に着きたいと思う。そうすれば母を家に連れて帰れるような気がするからだ。それなのに祖父母は少しも焦らず、あちこちにより道をする。バッドランズ、ブラックヒルズのラシュモア山(スー族の聖地なのに白人の顔ばかり、とサラマンカはあきれる)、イエローストーンのオールド・フェイスフル(大間欠泉)などなど。なぜならそれらは母の乗った観光バスも立ち寄ったところだからだ。
車の中では祖父母が退屈しないようにサラマンカがフィービィの家族に起こった事件を語って聞かせる。フィービィのところは非の打ち所のないきちんとした家庭だったはずなのに、母親が突然いなくなった。フィービィは隣のマーガレットさんを「名字がカダバーcadaverなので殺人鬼に違いないと」疑い、最近うろついている若い「変態」に誘拐されたのかもしれない、と疑う。サラマンカも巻き込まれて大変なことになりそうなところで急転直下、思いがけない事実が明らかになって幕が下りる。フィービィのお母さんが無事に戻ったのだ。でも、サラマンカのお母さんはまだ戻らない。

東から西への大旅行の間に、サラマンカ、フィービィ、祖父母の、三者三様の物語が語られていき、最後にサラマンカが、この旅は祖父母からの贈り物だったのだ、二人は母のモカシンを履いて歩くチャンスを与えてくれたのだと気づく、という見事な構成の作品である。原題はアメリカ・インディアンの警句「人をとやかくいえるのは、その人のモカシンをはいてふたつの月(Two Moons)が過ぎたあと」から取られている。(2012.12.2読了)
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by nishinayuu | 2013-02-02 09:51 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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