『幻のヴァイオリン』(アン・ライス著、浅羽莢子訳、扶桑社)


c0077412_1020998.jpg『Violin』(Anne Rice)
語り手のトリアナは54歳の女性で、少女時代に母がアルコール中毒で死に、結婚して生まれた娘は幼くして癌で死に、そのあとトリアナの親友に慰めを見出した夫は親友と共に去り、愛していた妹は家を出て行ったまま行方がしれない、というつらい経験をしている。そして今また、エイズでなくなった2度目の夫の死がなかなか受け入れられずに苦しんでいる。そんなトリアナのもとに、現代の人間とは思えない風体をした謎のヴァイオリニストが現れる。彼の奏でる音楽はトリアナが封じ込めてきた悲しみ、苦しみを暴き立てると同時に、トリアナがとうの昔にあきらめたヴァイオリニストへの夢をかきたてる。ついにトリアナは彼の手からその素晴らしい音色の名器を奪ってしまうのだが、それによってトリアナは彼の生きていた時代、19世紀末のウイーンへ引きずり込まれてしまう。彼はその名をステファン・ステファノフスキーといい、ウイーンに豪華絢爛たる邸宅を構えるロシア人貴族の息子だったが、おぞましい事件を引き起こしたために悲しみと苦しみに苛まれながら彷徨うことになった哀れな魂だったのだ。

作者が映画「インタビュー・ウイズ・ヴァンパイア」の原作者だということは、今回初めて知った。この作品はヴァンパイアものではないが、きらびやかでおどろおどろしい仕掛けがいっぱいの幻想的な小説である。ただし、主人公のトリアナはなぜか、背の低い小太りのあまり見栄えのしない中年女、ということになっていて、ちょっとずっこける。巻末の「解説」によるとこれは作者が自分の姿をトリアナに投影しているかららしい。どうせなら、トリアナも人間離れした美女にして欲しかった。
☆作者はこの作品を書くに当たって、若き女性ヴァイオリニストのリーラ・ジョセフォウィッツを「私の音」として選び出し、謝辞を捧げているそうです(「解説」の情報)。
☆篠田節子の『ハルモニア』(マガジンハウス)と『カノン』(文藝春秋)は、この作品と共通するものがあるので、この作品と合わせて読むのがお勧めだそうです(同上)。(2012.11.29読了)
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by nishinayuu | 2013-01-30 10:15 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2013-02-04 01:14 x
19世紀のウィーンで主人公は何に巡り合うのでしょうか。今までの人生がひっくり返れるのかしら。
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