『あの空をおぼえている』(ジャネット・リー・ケアリー著、浅尾敦則訳、ポプラ社)


c0077412_937873.jpg妹と一緒にトラックにはねられて自分だけ助かった少年が、妹に宛てて綴る手紙、という形で展開する家族の危機と再生の物語。
語り手のウィルは11歳。10月のはじめのある日、7歳の妹ウェニーといっしょに木工店に向かっていた。カブスカウトのミニカー・レースで優勝するには車に重りを付けないといけない、とパパが言ったので、木工店に行く必要があったのだ。ウェニーは行かなくてもよかったのに、いつもウィルにくっついて遊んでいたので、当然のようにいっしょに行って、いっしょにトラックにはねられた。そのあと起こったことをウィルはよく覚えている。暗いトンネルを抜けて、光のなかに飛び出したら、前の方をウェニーが光の人といっしょに飛んでいた。ウェニーは今も光のなかを楽しく飛び回っているに違いない、とウィルは思う。ウェニーは飛び回るのが好きな女の子だったから。ウィルもウェニーの後を追っていきたかったけれど、パパとママのことを思って引き返した。そして電気ショックで生き返る一瞬前に、ウィルの魂は聞いたのだった。パパの「なぜウェニーだったんだ」と言う声を。
家族のマスコットだった大切な妹を「自分の不注意から死なせてしまった」という思いに苦しむウィルを救ったのは、一冊のノートだった。ジェシー・ジェームズの遠い親戚だからなんでも話していいんだよ、とわけのわからないことを言いながらウィルにノートをくれたのは、教会員のジェームズさん。そのノートにウィルは毎日ウェニーに宛てた手紙を書く――悲しみから抜け出せないパパとママのこと、普通の女の子ではなかったウェニーのこと、新しくできた大食らいの友だちギャラガーのこと、ギャラガーとトンネルを探検したこと、臭いもの好きのイヌのブルウィンクルのこと、ジェームズさんとツリーハウスに上ったこと、3月に赤ちゃんが生まれてくること、ママは少しずつ前向きになっているけれど、パパは心を閉ざしたままなこと……。ウィルは事故のあと10日目から手紙を書き始めて、毎日、時には一日に複数回、手紙を書く。そして147日目の3月2日、ウェニーの誕生祝いをするために入った森で迷子になったウィルを必死で探し出したのはパパだった。父親は息子が妹の死からずっと日にちを数えていたことを知って衝撃と感動を覚え、息子は父の涙と腕の温もりに父の愛情を確信する。そしてウィルはパパも長い間、ウェニーの死の責任は自分にある、という思いに苦しんでいたことを知ったのだった。(2012.11.18読了)
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by nishinayuu | 2013-01-21 09:37 | 読書ノート | Trackback | Comments(1)
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Commented by マリーゴールド at 2013-01-28 23:35 x
親しい人の死に向き合うということは人間の成長にとって大切なことですね。
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