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『悲しみの鶸 上』(アンナ・マリア・オルテーゼ著、村松真理子訳、白水社)

c0077412_10205984.jpg『Il cardillo addolorato』(Anna Maria Ortese)
物語の舞台は18世紀末、ナポリ・ブルボン家の統治する王国の首都であるナポリ。1799年のナポリ革命の前後という時代を背景にして、壮大で複雑で不可思議な物語が展開する。ストーリーも文体も凝りに凝っている上に翻訳という薄い膜もかかっているため、靄か霧を通して眺める幻想の世界のようでもある。人物や場面の描写は綿密であるが、さまざまな人物がそれぞれの視点から語るため、真実がどこにあるのか定かではない。そもそも「鶸」やら「悲しみ」やらが何を意味しているのかはっきりわからないのだが、この答えは下巻で明らかにされるものと期待しよう。原書でも同じなのかはわからないが、この本の特徴の一つは目次がめったやたらに詳細なこと。内容を思い出すためのよすがとしてここに記しておく。

第1章ベレロポンテースと友人たちの太陽をめざす陽気な旅
三人の友/手袋職人の娘/結婚の申し込み/デュプレを救うために取り返された求婚の手紙/いつわりの出現/五月 ヴァンヴィテッリの朗らかな噴水とやや不躾な侯爵/受諾された申し込みと幸福な新郎/試される友情/交渉/丸い額の養女/ネヴィルが出発するが、戦いは終わらない/エルミナの失神/再び鶸について話される/伝言の背景の王子の苦悩が明らかにされ、われわれはある幼年時代の遠い事件に関する禁じられた謎解きに立ち会う/エルミナの絶望/アルベールが無分別な王子に決闘を挑む(と宣言する)ただし、何事もなされない/エルミナの崇高なる「説明」の効果と、カゼルタにもたらされたその良い結果/王子のぼんやりした悲しみと、ペンナルーロとの出会い/気の毒な手袋職人/墓石の上に現れては消えるいくつかの名前、そのうちの一つ、ヒエロニムス・ケプヒェン(またはベッレッティーノ)/ネヴィルは神の平安を再び見出す/「小さな家」/新郎新婦のための新たな財産/ナポリと、その町を愛する王子の魂に、雨が降る/「ああ、ぼくをすぐに忘れないで、ぼくの大事なひと!」/陽気な旅の結果/ネヴィルはリエージュの邸に戻る/「もしヒワが私を訪ねてきたら、通すように」

第2章 ババについての短い物語(「悦び」)
新郎新婦、再び金持ちになる/ドン・マリアーノの衰えと、彼が手放さぬある厚紙の箱/イングマールはナポリから「雌山羊」とその妹テレーザ連名の手紙を受け取る/ババの誕生/「小さな家」の大きな悦びとエルミナの胸に新たに秘められた小さな秘密(ノディエの一連の手紙より)/公爵も商人と同じ意見である/すっかり修繕の済んだ水晶玉の効果/アリ・ババの衰弱と、水晶玉の映す聖アントニオ街の小さな庭の様子/思いがけなく、平穏が聖アントニオ街に戻る/ネヴィルは安心し、ほかの冒険の数々の後、ナポリと自らの青春を忘却する
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by nishinayuu | 2013-01-03 10:22 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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