『オスカー・ワイルドとキャンドルライト殺人事件』(G・ブランドレス著、河内恵子訳、国書刊行会)


c0077412_10421016.jpg『Oscar Wilde and Candlelight Murders』(Gyles Brandreth)
ロンドンは国会議事堂近くのカウリー・ストリート23番地にある小さなテラスハウスで、キャンドルライトに囲まれた美しい少年の死体が発見される。発見者は、詩人であり、劇作家であり、当時センセーショナルな文人として名をはせていたオスカー・ワイルド。死体となっていたのは取るにたらない男娼だった16歳のビリー・ウッド。1889年8月31日の、太陽が照りつける午後のことだった。
ワイルドがそのことを友人であるロバート・シェラードに話したのはその夜遅く、夜中の12時を過ぎてからだった。ワイルドはその前にアメリカの出版人ストッダート氏と会っていたからだ。その席でワイルドはアーサー・コナン・ドイルという新しい友人を紹介され、名探偵を世に送り出したばかりのこの友人に、事件のことを語ろうと思いつく。翌日の9月1日、ワイルドはドイルとシェラードを伴ってカウリー・ストリート23番地に向かう。ところが現場に着いてみると、少年の死体は消え、血だらけだった床は蜜蝋で磨きあげられていて、殺人の痕跡は皆無だった。しかし部屋のあちこちを調べたドイルは、ワイルドが真実を語っていることを確信した。そして、ロンドン警視庁の警部エイダン・フレイザーは友人だから彼のところに行くように、と言って妻の待つ田舎に帰っていく。ところがエイダン・フレイザーがなかなか動き出さないので、結局ワイルド自身が事件の真相解明に尽力することになる。その観察力と推理力でドイルの度肝を抜いたワイルドがシャーロック・ホームズ、彼と行動を共にしてすべてを記録するシェラードがワトスンというわけである。

この作品は推理小説としても、ワイルドの人物記としても、当時のロンドンの雰囲気を伝える風俗小説としても楽しむことができる。因みに、語り手のロバート・シェラードはワーズワースの曾孫で、ワイルドの友人であったこと、ドイルとワイルドがストッダート氏の所で初めて出会ったこと、このときのストッダート氏の依頼から生まれたのがワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』とドイルの『四つの署名』だったことなどはすべて事実であることが、ワイルドの研究者である訳者の解説に記されている。(2012.10.15読了)
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by nishinayuu | 2012-12-16 10:44 | 読書ノート | Trackback | Comments(0)
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